朝鮮の政治家、独立運動の指導者。黄海南道(こうかいなんどう/ファンヘナムド)海州(かいしゅう/ヘーチュ)出身。貧農の家に生まれ、1894年甲午(こうご)農民戦争に参加、海州の先鋒(せんぽう)として活躍。日清(にっしん)戦争後、日本人による閔妃(びんひ)殺害事件(乙未(いつみ)事変)に憤激、1896年日本軍将校を殺害し、投獄されたが脱獄した。僧侶(そうりょ)となり、教育事業に従い、反日運動に挺身(ていしん)した。1911年寺内正毅(まさたけ)総督暗殺未遂事件の容疑者として逮捕、1914年に仮釈放された。1919年、三・一独立運動後、上海(シャンハイ)に亡命、大韓民国臨時政府に参加、警務局長、内務総長、政府主席を歴任した。1932年(昭和7)李奉昌(りほうしょう)を東京に派遣して天皇暗殺を謀り、また尹奉吉(いんほうきつ)をして上海爆弾事件を決行させた。蒋介石(しょうかいせき)の率いる中国国民党と行をともにし、1940年重慶(じゅうけい)で韓国光復軍を組織、解放の日に備えた。1945年11月帰国、韓国独立党党首となり、1948年、南朝鮮の単独選挙に反対、平壌(ピョンヤン)での南北政党社会団体連席会議に出席、朝鮮の分断回避、統一達成に尽力した。1949年、李承晩(りしょうばん/イスンマン)派の陸軍将校に暗殺された。
[中塚 明]
『梶村秀樹訳注『白凡逸志――金九自叙伝』(平凡社・東洋文庫)』
朝鮮の独立運動家。号は白凡。黄海道出身。18歳で甲午農民戦争に参加。1896年,日本人による閔妃(びんひ)虐殺事件を憤り,日本人陸軍中尉を斬殺して投獄されたが,98年脱獄。〈日韓保護条約〉締結後黄海道安岳で教師となり新民会運動に参加。1911年黄海道一帯の人士に対する弾圧事件(安岳事件)で3年余り入獄。三・一独立運動勃発後上海に渡り大韓民国臨時政府(臨政)に参画,警務局長,内務総長を経て26年国務領となり臨政の最高責任者になった。臨政の活動が満州事変後いっそう困難さを増すなかで,彼は抗日テロリズムによる局面打開をはかり,32年に李奉昌による桜田門事件,尹奉吉(いんほうきつ)による上海虹口公園爆弾事件を引き起こした。日本政府は金の首に巨額の懸賞金をかけたが,彼は中国各地を転々とし,40年臨政とともに重慶に入った。彼はそこで韓国光復軍を創設し本国進撃に備えたが,45年8月日本の降伏を迎えた。解放時彼は臨政主席の地位にあったが,アメリカ軍政庁が臨政の正統性を否認したため,同年11月一亡命者として帰国。不屈の独立闘士として多くの尊敬を集め,朝鮮信託統治反対運動の先頭に立った。左右の激しい対立のなかで〈右翼の巨頭〉と目されながらも,アメリカや李承晩の南朝鮮単独政府樹立計画にも反対し,一貫して統一朝鮮の完全自主独立を主張した。48年平壌での南北政党社会団体連席会議(南北協商)に参加。翌年,李承晩が放ったといわれる軍人に暗殺された。自伝《白凡逸志》は邦訳もある。
執筆者:大塚 嘉郎
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…しかし臨政は上海派とシベリア派の対立,安昌浩と李承晩の対立など指導者間の対立抗争もあって混乱が続き,23年国民代表会議の決裂後急速に勢力が弱まった。25年大統領李承晩の弾劾免職後,臨政を率いたのは金九であった。金九は32年李奉昌と尹奉吉(いんほうきつ)による相つぐ抗日テロ事件を引き起こし,また33年には蔣介石と対日戦線協力で合意をみた。…
…この信託統治案は日本の植民地支配の下で苦しみ,ようやく独立をかちとった朝鮮民族に強い衝撃を与えた。金九ら中国から帰国した大韓民国臨時政府(臨政)グループはただちに信託統治反対国民総動員運動委員会を結成,他の政党・団体も信託統治反対を声明し,連日〈反託〉デモを展開,31日の集会・デモは空前の規模に達した。だが翌46年1月2日朝鮮共産党は,突然,信託統治支持を表明,3日には独自に三国外相会議決定支持大会を開催。…
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