針供養(読み)ハリクヨウ

デジタル大辞泉 「針供養」の意味・読み・例文・類語

はり‐くよう〔‐クヤウ〕【針供養】

2月8日あるいは12月8日に、日常針仕事で折れた針を供養する行事。この日は針仕事を休み、針をコンニャク豆腐に刺したり、神社に納めたり、川に流したりする。 春》「糸竹のいとまのお針―/風生

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精選版 日本国語大辞典 「針供養」の意味・読み・例文・類語

はり‐くよう‥クヤウ【針供養】

  1. 〘 名詞 〙 毎年二月八日や一二月八日に女性が裁縫を休み、古針や折れた針を集めて、豆腐や蒟蒻(こんにゃく)などにさして、川に流したり、神社に納めるなどして供養すること。針納め。《 季語・春 》 〔俳諧・新季寄(1802)〕
    1. 針供養〈風俗画報〉
      針供養〈風俗画報〉

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改訂新版 世界大百科事典 「針供養」の意味・わかりやすい解説

針供養 (はりくよう)

針仕事を休んで古針や折れ針を供養し,裁縫の上達を祈る女性の行事。用の済んだ針を豆腐やこんにゃく,餅などに刺し,川へ流したり近くの社寺へ持ち寄って供養してもらうのが一般的で,全国の広い地域で2月もしくは12月の8日(こと八日)に行われている。これら両日を厄日と考え,一つ目小僧や厄病神来訪を説いて,山へ入るなとか仕事を早く切りあげて家で静かにしていよとする伝承が東日本を中心に各地にあるが,針仕事を休むというのも,これらの日が仕事を避けて忌籠(いみごもり)すべき日であったからだと思われる。北陸地方の沿岸部では,12月8日には海が荒れてハリセンボン(針千本)という魚が打ち上げられるが,それを軒につるして厄よけにしたり,富山県のように嫁いじめの伝説と結合させ,嫁が投身してハリセンボンになって吹き上げられ姑の顔に食いついたという話を伝えている所もある。いずれも厄神来訪の伝承に関連あるものであろう。厄日と針の供養との結びつきについては定説がないが,古針を近くの淡島(あわしま)祠・堂へ納める例の多いことから,淡島信仰との結びつきが予想できる。淡島信仰根拠地は女性に縁の深い和歌山市加太神社で,この祭神を婆利塞女(頗梨采女)(はりさいによ)とする説があり,それを針に付会させて,江戸中期以降淡島願人という下級宗教者が説いて回ったと思われる。この説を各地の裁縫の師匠などが取り入れ,仕事を忌むべき日に針仕事を休んで淡島を信仰し,針の供養をしたのが,これの普及定着を促すことになったのであろう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「針供養」の意味・わかりやすい解説

針供養
はりくよう

針仕事を休み、古針を供養する行事。全国に広く分布し、針の使用を忌んで裁縫を休み、その年の折れ針・古針を豆腐・こんにゃく・餅(もち)などに刺して近くの社寺(とくに淡島(あわしま)神社関係の)に納めて祓(はら)いや供養をしてもらったり、川へ流したりするのが一般的である。いわゆる事(こと)八日(2月8日と12月8日)の両日もしくはどちらかの日に行われる。本来の意味や起源は物忌みすべき日である事八日の行事全体のなかで探らなければならない。各地への普及は、婦人に縁のある和歌山市加太(かだ)の淡島神社の淡島願人(がんにん)が広めたとも、江戸時代後期から明治時代にかけて、裁縫学校などで技能の上達を祈って行われたのが定着したのだともいわれている。石川・富山県などには、この日、「針千本(はりせんぼん)」という魚が吹き寄せられるという伝承がある。

[田中宣一]

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百科事典マイペディア 「針供養」の意味・わかりやすい解説

針供養【はりくよう】

縫針を休ませ,古針や折れたものを集めて供養する行事。2月8日と12月8日の2回のところ,どちらか1回だけのところがある。古針を柔らかい豆腐やこんにゃくにさしたり,紙に包んで海に流したりする。江戸時代からの行事で,現在も裁縫師などの間で行われる。
→関連項目和裁

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「針供養」の意味・わかりやすい解説

針供養
はりくよう

事八日 (ことようか) の一環として行われるもので,針仕事を休み,縫い針を供養する行事。関東では2月8日と 12月8日,関西,九州では 12月8日に行われることが多い。対馬では針を紙に包んで休ませ,鹿児島では針を豆腐やこんにゃくに刺すなど地方によって異なる。

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