鈴木主水(読み)スズキモンド

デジタル大辞泉 「鈴木主水」の意味・読み・例文・類語

すずき‐もんど【鈴木主水】

享和元年(1801)内藤新宿の遊女白糸と情死した武士の名。また、その事件主題とした戯曲や歌謡。歌謡では踊り口説くどなどに今も残り、歌舞伎では嘉永5年(1852)江戸市村座初演の3世桜田治助作「隅田川対高賀紋すみだがわついのかがもん」などがある。
久生十蘭時代小説。昭和26年(1951)発表。同年、第26回直木賞受賞。昭和35年(1960)テレビドラマ化。

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精選版 日本国語大辞典 「鈴木主水」の意味・読み・例文・類語

すずき‐もんど【鈴木主水】

  1. 江戸後期の武士。江戸青山百人町に住み、妻と二人の子があったが、享和元年(一八〇一)、内藤新宿橋本屋の遊女白糸と情死したと伝えられる。その事件を素材に作られた唄が幕末に流行唄となり、瞽女(ごぜ)唄や盆踊唄にはいり、戯曲化された。歌舞伎脚本「隅田川対高賀紋(すみだがわついのかがもん)」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「鈴木主水」の意味・わかりやすい解説

鈴木主水 (すずきもんど)
生没年:?-1801(享和1)

江戸内藤新宿橋本屋の遊女白糸と情死し,家名断絶となったと伝えられる武士。詳細は不明だが,天保~嘉永期(1830-54)に流行唄となり,瞽女(ごぜ)唄のヤンレイクドキや盆踊唄にうたわれ,また実録本にも行われて著名であった。その歌詞は〈花のエエ花のお江戸のその町々に,さても名高き評判がござる,ところ四谷の新宿辺に,軒を並べて女郎屋がござる,紺ののれん桔梗の紋は,音に聞えし橋本屋とて,あまた女郎衆が皆玉揃ひ,中に全盛白糸様は年は十九で当世姿,立てば芍薬座れば牡丹,我も我もと名指しで上る,わけてお客のあるその中に,ところ青山百人町に鈴木主水といふ侍は,女房持にて子供が二人……〉。この俗謡に取材して歌舞伎化したのが1852年(嘉永5)3月市村座の《隅田川対高賀紋(ついのかがもん)》(3世桜田治助作)。2児を置き去りに家の崩壊もかえりみず,宿場女郎と心中をとげる武士に,幕末期の暗い世相と情趣が感取される。主水の妻お安が白糸に縁切りを頼む場面に使われた清元《重褄閨の小夜衣(かさねづまねやのさよぎぬ)》は常磐津にも改調されて現存するが,芝居は現在ほとんど行われない。内藤新宿を舞台化した新鮮味が当時好評だった。白糸主水の芝居はその後大坂へも移入され,55年(安政2)8月,中の芝居《褄重縁色揚(つまがさねえにしのいろあげ)》や《百人町浮名読売》などの上方系の作品としてしばしば上演された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鈴木主水」の意味・わかりやすい解説

鈴木主水
すずきもんど

俗説、およびこれを脚色した音曲・戯曲上の人物名。事実は未詳だが、江戸青山に住んだ侍で、1801年(享和1)内藤新宿(ないとうしんじゅく)の娼妓(しょうぎ)橋本屋白糸(しらいと)と情死したといわれ、嘉永(かえい)(1848~54)ごろ、瞽女(ごぜ)の唄(うた)「ヤンレェくどき」に謡われて名が広まり、清元(きよもと)・常磐津(ときわず)や八木節(やぎぶし)にも扱われた。歌舞伎(かぶき)に脚色した最初は、1852年(嘉永5)3月江戸市村座初演、3世桜田治助(じすけ)作『隅田川対加賀紋(ついのかがもん)』で、書替え物に『褄重縁色揚(つまかさねえにしのいろあげ)』、『鈴木主水恋白糸(こいのしらいと)』『恋音便(こいのたより)主水白糸』などがあり、なかでも『百人町浮名読売(ひゃくにんまちうきなのよみうり)』は近年でも上演され、7世沢村宗十郎の当り芸「高賀(こうが)十種」に選ばれている。

[松井俊諭]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「鈴木主水」の解説

鈴木主水(1) すずき-もんど

1548-1589 戦国-織豊時代の武将。
天文(てんぶん)17年生まれ。真田昌幸(さなだ-まさゆき)の家臣で上野(こうずけ)(群馬県)名胡桃(なくるみ)城代。北条氏の家臣猪俣(いのまた)範直に名胡桃城をうばわれ天正(てんしょう)17年11月自刃(じじん)した。42歳。この事件は,豊臣秀吉が私戦を禁じた命に違反するものとして小田原攻めのきっかけとなった。名は重則(しげのり)。

鈴木主水(2) すずき-もんど

?-1801 江戸時代後期の武士。
江戸青山百人町にすみ,享和元年内藤新宿の遊女白糸と心中したという。流行唄(はやりうた)「ヤンレイくどき」にうたわれひろく知られた。嘉永(かえい)5年「隅田川対高賀紋(ついのかがもん)」(3代桜田治助作)として歌舞伎化され,上方系の「百人町浮名読売(うきなのよみうり)」が近年でも上演されている。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「鈴木主水」の解説

鈴木主水
(通称)
すずきもんど

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
重褄閨の小夜衣 など
初演
嘉永5.3(江戸・市村座)

鈴木主水
すずきもんど

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治16.2(大阪・大清芝居)

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