上水道水によくみられる鞘(しよう)/(さや)細菌目Chlamydobacterialesに含まれる細菌。水中の鉄を酸化し,体の周辺に水酸化鉄を多量にためている。一般にみられるものにはレプトスリクスLeptothrix,クレノスリクスCrenothrix,ガリオネラGallionella,シデロカプサSiderocapsaなどがあり,その中で最も普通にみられるものはレプトスリクスである。細菌体は糸状で,その中に同筒形の細胞が入っている。外側の鞘に相当する部分は当初は透明であるが,しだいに褐色の水酸化鉄の沈殿物がみられるようになる。増殖は細胞分裂や運動性の遊走子の形成による。上水道水以外でも,鉄分の多い水たまりや小川の底が茶褐色になっているときには,ほとんどこのような鉄細菌が多量に生育していることによる。パイプを詰まらせたりする以外は人間に害を及ぼさない。
執筆者:椿 啓介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
二価鉄イオンを分子状酸素で三価鉄イオンに酸化することによって炭酸同化のエネルギーを得る細菌。土壌中の鉄は有機または無機の形をとり、不溶性であるが、鉄細菌の作用によって、直接または間接的に溶解性となる。鉄細菌には、ネジレ鉄細菌属Gallionella、イト鉄細菌属Leptothrix、鉄細菌属Siderocapsaなどがあり、いずれも水酸化鉄を多量に蓄積するが、炭酸ガス(二酸化炭素)の同化性をもつものはネジレ鉄細菌属だけである。また、チオバチルスThiobacillus ferrooxidansは酸性条件下で二価鉄を酸化して炭酸を固定する。二価鉄の酸化によるエネルギーは小さいため、多量の二価鉄が必要であり、その結果、水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3ができる。
[曽根田正己]
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水中で鉄を酸化して Fe3+ とし,沈殿を菌体外表に生じる細菌の総称.上・下水中に広く分布する.粘膜をつくってパイプの閉そく,腐食の促進,赤水や臭気の原因となる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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