鉄細菌(読み)テツサイキン(英語表記)iron bacteria

デジタル大辞泉 「鉄細菌」の意味・読み・例文・類語

てつ‐さいきん【鉄細菌】

化学合成を行う細菌で、二価イオンを三価鉄イオンに酸化して得られるエネルギーを利用し、炭酸同化を行うもの。鉄バクテリア

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精選版 日本国語大辞典 「鉄細菌」の意味・読み・例文・類語

てつ‐さいきん【鉄細菌】

  1. 〘 名詞 〙 化学合成をする細菌の一つ。鉄イオンまたはマンガンイオンを呼吸的に酸化して得られるエネルギーを用いて炭酸同化を行なう無機栄養細菌。からだの周囲赤褐色水酸化鉄を付着している。鉄鉱泉・鉄分を含む沼沢地・水道の鉄管中にすむ。日本水田に多く存在する。鉄バクテリア。〔生命を探検する(1964)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「鉄細菌」の意味・わかりやすい解説

鉄細菌 (てつさいきん)
iron bacteria

上水道水によくみられる鞘(しよう)/(さや)細菌目Chlamydobacterialesに含まれる細菌。水中の鉄を酸化し,体の周辺に水酸化鉄を多量にためている。一般にみられるものにはレプトスリクスLeptothrix,クレノスリクスCrenothrix,ガリオネラGallionella,シデロカプサSiderocapsaなどがあり,その中で最も普通にみられるものはレプトスリクスである。細菌体は糸状で,その中に同筒形の細胞が入っている。外側の鞘に相当する部分は当初は透明であるが,しだいに褐色の水酸化鉄の沈殿物がみられるようになる。増殖細胞分裂や運動性の遊走子形成による。上水道水以外でも,鉄分の多い水たまりや小川の底が茶褐色になっているときには,ほとんどこのような鉄細菌が多量に生育していることによる。パイプを詰まらせたりする以外は人間に害を及ぼさない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄細菌」の意味・わかりやすい解説

鉄細菌
てつさいきん
iron bacteria

二価鉄イオンを分子状酸素で三価鉄イオンに酸化することによって炭酸同化のエネルギーを得る細菌。土壌中の鉄は有機または無機の形をとり、不溶性であるが、鉄細菌の作用によって、直接または間接的に溶解性となる。鉄細菌には、ネジレ鉄細菌属Gallionella、イト鉄細菌属Leptothrix、鉄細菌属Siderocapsaなどがあり、いずれも水酸化鉄を多量に蓄積するが、炭酸ガス(二酸化炭素)の同化性をもつものはネジレ鉄細菌属だけである。また、チオバチルスThiobacillus ferrooxidansは酸性条件下で二価鉄を酸化して炭酸を固定する。二価鉄の酸化によるエネルギーは小さいため、多量の二価鉄が必要であり、その結果、水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3ができる。

[曽根田正己]

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百科事典マイペディア 「鉄細菌」の意味・わかりやすい解説

鉄細菌【てつさいきん】

鉄バクテリアとも。水中の鉄を酸化して獲得されるエネルギーを用いて炭酸同化作用を営む細菌。糸状で同筒形の細胞の外側を鞘(さや)がつつむ。鞘は最初透明だが,しだいに水酸化鉄の沈殿がたまり掲色になる。生殖は分裂か遊走子の形成による。代表的なものはレプトスリクス。
→関連項目独立栄養

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化学辞典 第2版 「鉄細菌」の解説

鉄細菌
テツサイキン
iron bacteria

水中で鉄を酸化して Fe3+ とし,沈殿を菌体外表に生じる細菌の総称.上・下水中に広く分布する.粘膜をつくってパイプの閉そく,腐食の促進,赤水や臭気の原因となる.

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