鉛室法(読み)えんしつほう(英語表記)lead chamber process

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

鉛室法
えんしつほう
lead chamber process

非常に古くから行われてきた硫酸の工業的製法の一つ。鉛内張りの反応室内で,二酸化硫黄硝酸窒素酸化物触媒として空気酸化により硫酸をつくるので鉛室法と呼ばれる。そのほか,グローバ塔とゲイ=リュサック塔から成る。得られる硫酸の濃度は 62~66%と薄く,また不純物も多いので,主として過リン酸石灰や硫安製造に用いられていたが,これらの生産の少くなった日本では,純粋・高濃度の硫酸が得られる接触法にほとんど切替っている。

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百科事典マイペディアの解説

鉛室法【えんしつほう】

硫酸製造法の一つ。硫化鉄鉱や硫黄鉱を焙焼(ばいしょう)してできる亜硫酸ガスと空気を除塵(じょじん)後グラバー塔に入れ,触媒として窒素酸化物を混入して鉛室(鉛張りの室)に送る。ここで上部から散布される水と反応して硫酸ができる。廃ガスはゲイ・リュサック塔に導かれ,窒素酸化物が冷濃硫酸に吸収され含硝硫酸となり,再びグラバー塔に送られる。現在は接触法が主流で,この方式は衰退。
→関連項目塔式法硫酸

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大辞林 第三版の解説

えんしつほう【鉛室法】

硫酸の製造法の一。鉛板で内張りをした室内で、酸化窒素を触媒として二酸化硫黄を酸化し、水に溶解して硫酸(鉛室硫酸)を製造する方法。現在、日本ではほとんど行われていない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鉛室法
えんしつほう

硫酸製造法の一種。正しくは鉛室式硫酸製造法というべきであろう。鉛室とよばれる大きな容積の鉛張りの部屋の中で、二酸化硫黄(いおう)を窒素酸化物で酸化して硫酸を製造する方法をいう。焙焼炉(ばいしょうろ)で発生させた二酸化硫黄を空気と混合して、まずグラバー塔に導き、ゲイ・リュサック塔からきたニトロシル硫酸HSO4・NOに接触させる。ここで一酸化窒素が遊離し、二酸化硫黄とともに鉛室に入る。鉛室の上部からは水が注がれ、二酸化硫黄とニトロシル硫酸と反応し、硫酸(鉛室硫酸)が生成する。このとき同時に生成する一酸化窒素の半分が空気で酸化されて二酸化窒素となり、ゲイ・リュサック塔に送られて硫酸と反応し、ニトロシル硫酸となって回収され、グラバー塔に送られてふたたび酸化に用いられる。1746年にイギリスのバーミンガムで、この方法による硫酸工場が操業を開始している。鉛室硫酸の濃度は60~80%と低く、不純物も含まれていて用途が限られるため、鉛室法は日本ではほとんど廃絶している。[足立吟也]

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世界大百科事典内の鉛室法の言及

【化学工業】より

…繊維の漂白は,それまで,海藻や木炭などの灰汁に浸し,天日にさらし,それから酸敗ミルクで中和するという方法であったが,この時代にはソーダと硫酸が使われるようになった。硫酸は,1749年にイギリスのJ.ローバックが硫黄を原料として鉛室を用いる方法(鉛室法)で大量につくることに成功し,また91年にはフランスのN.ルブランがルブラン法によるソーダの工業化に成功した(ソーダ工業)。こうして18世紀末には,硫酸とソーダという基礎化学品が工業化されることになった。…

【ローバック】より

…1742年ライデン大学で医学の学位をとり,バーミンガムで開業したが,医療よりも化学の実験に多くの時間をさいた。46年鉛室を用いて硫酸を製造する〈鉛室法〉を発明し,硫酸の製造法に革命をもたらす。その後,製鉄業に関心を向け,59年製鉄所を建設し製鉄法に種々の改良を試みて成功した。…

※「鉛室法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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