日本大百科全書(ニッポニカ) 「おとめ座」の意味・わかりやすい解説
おとめ座
おとめざ / 乙女座
初夏のころの宵の南天に横たわる大きな星座。黄道十二星座の一つで処女宮。正義の女神アストライア、または農業の女神デメテルの娘ペルセフォネの姿とみられている。ただし1等星スピカ以外は3等星以下の暗い星ばかりなので、空の暗く澄んだ場所でないと麦の穂を携えた女神の姿をたどるのはむずかしい。スピカは日本では福井県あたりで「真珠星」の名があり、その清らかな輝きにふさわしいが、実体は絶対等級マイナス2等星と0.3等の伴星の二つがわずか4日の周期で巡り会う分光連星である。この星座の北部にはおとめ座銀河団があり、多くの銀河を小望遠鏡で見ることができる。いちばん明るく見やすい銀河は、からす座との境界に近いM104で、その形からソンブレロ銀河の名がある。
[藤井 旭]
『藤井旭著『春の星座』(1989・金の星社)』▽『瀬川昌男著『星と星座と宇宙の旅1 春の星と星座』(1997・小峰書店)』▽『藤井旭著『春・夏星座図鑑――もっと知りたい春・夏の星座』(2002・偕成社)』