直接的な差別を含まない制度や基準であっても、特定の性別の人などに不利益になるものは差別に該当するという考え方。男女雇用機会均等法の2007年施行の改正で、職務と関連がないのに①募集・採用時に身長・体力を条件にする②総合職の募集・採用時に全国転勤を要件にする③昇進時に転勤経験を要件にする―の3類型を間接差別と規定し、合理的な理由がなければ実質的に女性が不利益を被るとして禁じた。3類型以外の措置でも、訴訟で違法と判断される可能性がある。
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外見上は、人種や皮膚の色、宗教、性、出身国などの属性に中立的な規定、基準、慣行であっても、その適用の結果、合理的な理由もなく、ある属性の者を他の属性の者より不利に扱うことを間接差別という。反対に、たとえば女性であることを理由に行なわれる差別は、直接差別とよばれる。
間接差別の概念は、黒人の高校進学率が低い時代に高卒を雇用の要件にすることが差別的効果をもつとした1971年のアメリカの判例に由来するとされ、イギリスなどヨーロッパ連合(EU)諸国へと伝播(でんぱ)した。日本では、2006年(平成18)の男女雇用機会均等法の改正の際、性に関してこの概念が導入された(7条)。もっとも、法律上、間接差別という用語が用いられているわけではなく、以下のような事業主の行う措置を禁止するという定め方をしている。すなわち、間接差別にあたる措置とは、(1)募集や採用その他の雇用に関する措置であり、(2)労働者の性別以外の事由を要件とするものであるが、(3)当該措置の要件を満たす性別の比率などに照らし、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置で、(4)当該措置が業務上必要性があるなど合理的理由がある措置でないこと、である。(3)に該当する措置は厚生労働省令(男女雇用機会均等法施行規則)で定められている(2条)。これによれば、(1)労働者の募集・採用について身長、体重、体力を要件とすること、(2)労働者の募集・採用について転勤できることを要件とすること、(3)労働者の昇進について、異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とすること、の三つが禁止の対象となる。なお、これ以外についても民法など別の法律を適用して違法となる可能性は残されている。
間接差別の概念は、差別的な影響をもたらすさまざまな基準を包摂していく性質を有するだけに、どこまでを法的な規制の対象にするかが問題となる。日本では禁止の対象を限定列挙する方式が採用されたが、対象の見直しが今後の課題となる。
[吉田美喜夫]
『深野和男著『こう変わる改正男女雇用機会均等法の実務――間接差別禁止、セクハラ防止の要点』(2007・労務行政)』
(桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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