関所の通行許可証。古代、中世に過所、過書という関所などの通行許可証があり、室町時代に関所手形がみられるが、一般化したのは江戸時代である。江戸時代の関所手形は関所切手、手形、証文ともいい、その設定の目的は、鉄炮(てっぽう)が江戸に搬入され、また人質である大名の妻子が江戸から逃れるのを警戒し取り締まることにあった。そこで関所手形は鉄炮手形と女手形が主で、後者の発行が多かった。大坂では、町の惣年寄(そうどしより)が関所手形を請う婦人の身元を吟味し、人主(ひとぬし)及び年寄五人組より証文をとり、これを町奉行(ぶぎょう)に差し出し、そこから手形を得て本人に交付することとなっていた。江戸から出発する婦人には、一定の手続を経て幕府留守居(るすい)などが発行していた。書面は、発行者が旅行者の身元を保証して通行許可を関所役人に申請する形式であった。東海道箱根および新居(あらい)の関所がもっとも厳重であった。なお、一般の男子は関所手形を必要としなかった。
[渡辺信夫]
関所の通行許可証。古代,中世には過所(かしよ)と称するのが一般的であるが,室町時代からこの名称がみられるようになる。関所切手とか単に手形,証文ともいう。江戸時代の関所手形は大きく分類すると,鉄砲手形と女手形である。鉄砲手形は鉄砲や武具類を江戸方面に搬入する際に必要で,幕府老中だけが発行権を有していた。女手形は女性の通行証文をいうが,広義には手負(ておい)・乱心の者の通行,首や死骸の運搬に必要な手形をも含めた。手負や乱心の者は犯罪の危険があるとして男女ともに手形を必要とした。江戸から出発する女性は幕府留守居の発行した女手形が必要で,そのほか駿河国からの出発には駿府町奉行,中国以西の女性は所司代の発行する手形というように,その出発地によって詳細な規定があった。一般の男性は関所手形を必要としなかったが,関所での取調べの煩雑を避けるため,名主や領主の発行した証文を携行する旅人もあった。
執筆者:渡辺 和敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
通手形・関所証文・関所切手とも。関所の通行許可証。古代~中世には過書(かしょ)・過所ともいった。江戸時代,関所手形には女手形と鉄砲手形があり,関所通行に必要なものであった。男性が関所を通過するときは,制度的には往来手形だけで十分で,関所手形は必要なかったが,取調べの煩雑をさけるためこれを携行する旅行者もいた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…江戸時代の旅行者の旅行許可書で,名主や所定の役人が発行した。往来手形には旅行者の氏名・年齢・居住地のほか,所属する旦那寺や旅の目的などが記され,関所手形と兼用できるしくみのものもあり,なかには旅行中の死亡事故に際しての葬り方にまで言及している場合もある。とくに旅先の旅籠屋での宿改めに利用された。…
※「関所手形」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新