洗濯やドライクリーニング時の布の収縮を防止する加工。繊維の種類により収縮の機構が異なり,その対策も異なる。レーヨンの場合には,樹脂加工を行って耐水性を向上させることにより防縮効果が得られる。綿の場合にも樹脂加工により防縮効果が得られるが,さらに,サンホライズ加工などの圧縮収縮仕上げにより,染色工程などで生じた布の経(たて)方向の残留ひずみが洗濯水中で元の長さに戻ろうとする緩和収縮を防止する。この仕上げ法は,布の経方向を残留ひずみに相当する分だけあらかじめ機械的に強制的に縮めておく方法である。ポリエステルなど熱可塑性繊維の場合は,そのガラス転移温度またはそれ以上の温度でヒートセットすることにより防縮性が得られる。ヒートセット法には,湿熱,スチームおよび乾熱処理法がある。羊毛の場合は,緩和収縮のほかに,羊毛繊維に独特の,表面のうろこ構造による摩擦係数の異方性が主因となるフェルト収縮がある。緩和収縮を防ぐ方法としては,イギリスで始まり200年の歴史をもつロンドンシュリンクLondon shrinking法が代表的であり,湿らせたモスリンなどで毛織物をゆっくりと吸湿させたのち自然乾燥で収縮させ,さらに長時間布を圧縮する。紳士物用の梳毛(そもう)織物に対して行う。フェルト収縮を防ぐ方法は大別して,クロリネーション(塩素化)などの酸化処理により繊維表面のうろこ部分を劣化させる方法と,繊維表面を柔軟なポリマーで被覆する方法がある。前者では,反応をうろこ部分だけにとどめることがむずかしい。後者では,風合いを損なわないように少量のポリマーで被覆することが必要である。代表的な方法に,軽度のクロリネーションを行ったあと,エピクロルヒドリン-ポリアミド樹脂で処理することにより,機械洗濯のできる毛織物やニット製品を得るスーパーウォッシュ加工superwash processがある。なお最近,日本では,うろこを化学的に完全に除去する加工法が企業化され,防縮性に優れ,風合いを改良する加工法として注目されている。
執筆者:坂本 宗仙
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
織物は製造時に湿潤,加熱などでひずみを与えたとき,繊維の膨潤,ひずみの緩和により,布が収縮することがある.また,毛織物では羊毛の構造と性質により,条件によっては,フェルト化が起こり,毛織物がしだいに収縮する.これらの収縮を防ぐための加工をいう.
(1)物理的手段によりひずみを緩和する方法:熱および水分を与えながら布に余裕をもたせ,緩和収縮させ,ひずみを取り除き,予測される使用条件においての収縮の進行をあらかじめ取り除く.おもにセルロース系織物,合成繊維に用いられる.布に給湿とともに機械的作用を併用し,積極的にあらかじめ収縮させる方法は,綿を主としたセルロース系織物に用いられる(サンフォライズ加工).
(2)化学的手段によるもの:セルロース系織物に対して,熱硬化性樹脂,反応性加工剤を用い,防しわ性を与えるとともに防縮性を与える(樹脂加工).毛織物の収縮を防ぐには,羊毛を塩素化,酸化などの処理により,フェルト性を減少させる方法や,羊毛スケール表面に界面重合などで薄い樹脂皮膜を形成させる方法がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
織物などを洗濯などで縮まないようにする加工。この方法には、機械的に行う方法と、樹脂加工によるものとがある。機械的に防縮加工をする「サンフォライズ」加工Sanforizingは、アメリカの発明者の名にちなんでつけられた商標で、工程は、布をブランケットの間に通過させ、蒸気によってセットする。この加工を施したものは、洗濯による収縮率が経緯(たてよこ)とも1%以下になるので、とくにワイシャツ地用のブロードなど高級織物に施される。樹脂加工によるものは、樹脂を繊維内部に浸透させ、乾燥ののち、熱空気中で高温処理し、縮合反応により繊維素分子間に樹脂を形成させる。すると分子間に架橋効果を与え繊維素分子の結合状態が緊密となり、防縮効果があがることになるわけである。ただ引裂強さが低下し、生地(きじ)を弱めることがある。
[角山幸洋]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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