阿佐井野宗瑞(読み)あさいのそうずい

精選版 日本国語大辞典 「阿佐井野宗瑞」の意味・読み・例文・類語

あさいの‐そうずい【阿佐井野宗瑞】

  1. 室町後期の医者。堺の人。婦人科医として名があり、日本最初の医書となった中国の「医書大全」や清家本「論語」など、いわゆる阿佐井野版を開版した。享祿四年(一五三一)没。

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改訂新版 世界大百科事典 「阿佐井野宗瑞」の意味・わかりやすい解説

阿佐井野宗瑞 (あさいのそうずい)
生没年:?-1531(享禄4)

室町後期の儒医。阿佐井野家は堺の名家で,宗瑞は医を業とし女科(産婦人科)を得意とした。1528年(享禄1)明の熊宗立著《医書大全》を校訂,出版したが,これは日本最初の刊行医書として著名である。阿佐井野家では他に《三体詩》や清原宣賢の指導を仰いだ《論語》(天文版論語)を刊行しており,世に阿佐井野版といわれ,図書の印刷普及に大きく寄与した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿佐井野宗瑞」の意味・わかりやすい解説

阿佐井野宗瑞
あさいのそうずい
(1473?―1532)

室町後期の堺(さかい)(大阪府)の豪商。代々屋号を遠野屋といった。文学を好み、医術に通じ婦人科に詳しいので、世人は阿佐井野婦人医とよんだといわれるが医家ではない。明(みん)の熊宗立(ゆうそうりつ)(1409ころ―1482)の編書『新編名方類証医書大全』24巻が渡来したとき、部数が少なく医家の手に入りにくいのを憂え、私費で1528年(大永8)に翻刻し、流布せしめた。これが日本の医書刊行の最初で、そのいきさつを建仁寺の僧幻雲寿桂(じゅけい)(?―1533)が跋文(ばつぶん)に記している。没後1533年(天文2)には『論語集解(しっかい)』の再刻も行われた。

[宗田 一]


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朝日日本歴史人物事典 「阿佐井野宗瑞」の解説

阿佐井野宗瑞

没年:天文1.5.19(1532.6.22)
生年:文明5(1473)
室町後期の出版人,事業家。号は雪庭。家は屋号を能登屋もしくは遠野屋と称した泉南(堺市)の豪商。文学を好み,医に通じて女科(産婦人科)を得意としたとも伝えられるが,職業医師ではなかったらしい。大徳寺の僧大林宗套に帰依した(法号は雪庭宗瑞居士)。財を出版事業に投じたことで書誌学上に名を残すこととなった。『三体詩』(阿佐井野版)の印行,単経本『論語』(天文版,没後1533年刊)の刊行がある。また明の熊宗立が著した『医書大全』を享禄1(1528)年,月舟寿桂 の跋を付して復刻。これは日本最初の医書印刷である。

(小曾戸洋)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「阿佐井野宗瑞」の解説

阿佐井野宗瑞
あさいのそうずい

?~1531.5.17

室町後期の医師。堺の人。婦人科医として活躍したと伝えるが不明。屋号を野遠屋という商人だったともいう。「論語集解」その他の儒書を刊行したが,1528年(享禄元)明版の医書「医書大全」10巻を私費を投じて板刻し,日本最初の医書刊行をなしとげた。交流のあった建仁寺の月舟寿桂(げっしゅうじゅけい)の跋文によれば,この刊行にあたって明本三写の誤りを正したというから,かなりの医学知識をもっていたらしい。堺の南宗寺をおこした大徳寺の僧大林宗套(だいりんそうとう)に帰依した。法名雪庭宗瑞居士。一説に没したとき60歳。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「阿佐井野宗瑞」の解説

阿佐井野宗瑞 あさいの-そうずい

?-1531/32 戦国時代の医師。
和泉(いずみ)(大阪府)堺(さかい)の名家に生まれる。女科(産婦人科)を得意とした。明(みん)(中国)の熊宗立(ゆう-そうりつ)の「医書大全」を私財を投じて翻刻,享禄(きょうろく)元年刊行した。本書は医書としては日本最初の印刷物。享禄4/5年5月死去。没年齢は60歳といわれる。屋号は遠野屋。

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旺文社日本史事典 三訂版 「阿佐井野宗瑞」の解説

阿佐井野宗瑞
あさいのそうずい

?〜1531
室町末期の儒医
堺の人。中国の医学と儒学を合わせ学び,1528年明の医書『医書大全』を出版。その死後 '33年『論語集解』も刊行された。

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