身体障害者、知的障害者、精神障害者を一定割合以上雇用することを義務づけた法律。正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭和35年法律第123号)。障害者の雇用機会を広げ、障害者が自立できる社会を築くことを目的とする。職業リハビリテーションや在宅就業の支援など障害者の雇用の促進について定めている。1960年(昭和35)に「身体障害者雇用促進法」として制定されたが、1987年に現行法に改称された。当初、障害者の雇用は事業主の努力目標であったが、1976年に法的義務となった。身体障害者に加え、1998年(平成10)に知的障害者、2018年(平成30)には、そううつ病や統合失調症などの精神障害者の雇用が義務化された。2016年4月から募集、配置、昇進、賃金などにおける障害者の差別が全面的に禁止となり、差別があったと障害者が苦情を申し出た際には、事業主は自主的に解決を図るように努め、解決しない場合、紛争調整委員会で調停する仕組みが導入された。2017年に行政機関で障害者雇用の水増し問題が発覚したのを受け、2020年4月から、民間企業に課されていた障害者手帳の写しなどの確認書類の保存義務を行政機関にも課した。不正をチェックするため、厚生労働省の監督権限を強化し、行政機関に障害者雇用に関する報告を求める権限や、水増しが発覚した場合に是正勧告できる権限を与えた。障害者の雇用を促進するため、法定雇用率に算入できない短時間労働(週10時間以上20時間未満)の障害者を雇用した民間企業に特例給付金を支払う仕組みを導入し、障害者を積極採用している中小企業を評価・認定する制度も創設した。
障害者雇用促進法は、常用労働者全体に占める障害者の雇用目標割合を「法定雇用率」として定めている。2018年4月以降、民間企業(従業員45.5人以上)の法定雇用率は2.2%以上、国・地方自治体は2.5%以上、都道府県教育委員会は2.4%以上となった。法定雇用率に達しなかった民間事業主は不足人数1人につき月額5万円の納付金を納めなければならない。国はこれを原資に法定雇用率を超えて雇用している事業主に助成金を支給し、障害者の雇用を促している。法定雇用率に達しなかった行政機関は、不足人数1人につき年60万円の庁費を翌年度予算で減額される。厚生労働省の調査では、2018年6月時点で、民間企業で働く障害者は約53万4800人と過去最高になった。行政機関の雇用者は5万1900人。平均雇用率は民間が2.05%、行政機関が2.11%といずれも法定雇用率を下回っている。
[矢野 武 2019年10月18日]
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