日本大百科全書(ニッポニカ) 「集会・結社の自由」の意味・わかりやすい解説
集会・結社の自由
しゅうかいけっしゃのじゆう
多人数が一定の目的で特定の場所に集合する自由をさす。伝統的な自由権の一種で、単に「集会の自由」ともいう。この場合、結社が継続的な集合であるのに対し、集会は一時的な集合を意味し、屋内集会と屋外集会とに区別される。結社としては政党、協会、学術団体などがその例にあげられる。労働組合も結社であるが、労働者の組合結成の自由は、団結権としてとくに憲法によって保障されている(28条)。
集会・結社の自由は、思想・意見の交流、討議、特定の意思表示を確保するための、民主主義社会における重要な権利の一つである。明治憲法もこれらの自由を保障していたが、法律の範囲内で保障されていたにすぎず、そのため、治安維持法、治安警察法によって集会は警察的な取締りを受けた。日本国憲法ではこのような法律の留保はない(21条1項)。ただし、屋外集会については、公園・道路その他公共の場所の管理の都合上、許可制をとるなどの制限を受けている。1952年(昭和27)メーデー会場として皇居外苑(がいえん)の使用許可が申請されたが、これの管理者であった当時の厚生大臣が不許可にしたため、裁判になった事件があったが、最高裁判所はこれを合憲とした(1953年判決)。また、政治的結社の自由については、破壊活動防止法や政治資金規制法などにより実質的な制約を受ける。
[池田政章]
集団行進・集団示威運動
特定の場所に集合した多数の人々が「動く」と集団行進といわれる。また、屋外集会が一定の目的を達成するため気勢をあげるなど、集団の力を示す行動をとると、それは集団示威運動(デモンストレーション)とよばれ、行進を伴うとデモ行進といわれる。いずれも大衆運動の手段として、とくに政治的な主張を貫くために用いられる思想表現の一形式である。しかし、これらは一般公衆の自由・権利を妨害する場合も考えられるので、制限を加えられることがある。現在その制限を定める法律はなく、条令(いわゆる公安条例)や許可制をとるなどの規制が行われている。
[池田政章]