江戸時代において、庶民が離婚する際、夫から妻またはその父兄に渡す書付。離婚の権利は夫にあったので、離縁状を書くのは夫に限られた。去(さり)状、暇(いとま)状などともよばれたが、『公事方御定書(くじかたおさだめがき)』では離別状と称している。三行半に書く俗習があったので、三下(みくだ)り半(はん)ともよばれた。文言は、穂積重遠(ほづみしげとお)の述べたように、離婚文言と再婚許可文言よりなっていた。夫が妻またはその父兄に離縁状を交付すれば離婚は成立するわけであるが、実際上は、親類や媒酌人などが離縁状を一時預かることが行われ、それほど簡単に離婚になったわけではないようである。『公事方御定書』の規定によると、離別状をとらないで他へ嫁した女は髪を剃(そ)って親元へ返され、また、離別状を遣わさないで後妻を呼んだ者は所払(ところばらい)の刑に処せられた。
[石井良助]
江戸時代において庶民が離婚するとき,嫁入り・婿入りを問わず,必ず夫から妻へ交付するを要した文書で,これの授受によって夫婦とも再婚することができた。幕府法上離縁状の授受なしに再婚した場合,男は所払(ところばらい)の刑に処せられ,女は髪をそり親元へ帰された。離縁状の文言は〈其方事我等勝手ニ付此度離縁致し候,然ル上は何方え縁付候共差構無之候仍如件〉のように,夫が妻を離婚するという離婚文言と以後再婚してもさしつかえない旨の再婚許可文言とから成るのが普通である。〈勝手ニ付〉は離縁状の代表的離婚事由であり,離婚に至ったのは夫のつごうによったこと,いいかえれば妻の所為(責任)ではないことを表示している。離縁状は離別状,去状(さりじよう),暇(いとま)状,隙(ひま)状などといい,また3行半に書かれることが多かったので三行半(みくだりはん)と俗称されたのである。
執筆者:高木 侃
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去状(さりじょう)・暇状(いとまじょう)・隙状(ひまじょう)・離別状とも。江戸時代,庶民が離婚するときに夫が妻に交付した文書。夫が妻に離婚する旨を言い渡した離婚文言と,以後の再婚を許可する再婚許可文言からなる。3行半に書かれることが多いため,三行半(みくだりはん)とも俗称された。庶民の離婚は嫁入り・婿入りをとわず夫から妻への離縁状の交付を要し,これにより両者とも再婚が可能となった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…とすれば,ここには,一夫一婦制家族を原則的に守ろうとする幕府の期待がこめられていることがしられるであろう。もっとも,それでも,離婚するときには,夫が妻に去状(さりじよう)(離縁状)を与えることが必要だった。これがないと,その妻はあらたに改嫁=再婚することができないからである。…
※「離縁状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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