所払(読み)ところばらい

精選版 日本国語大辞典 「所払」の意味・読み・例文・類語

ところ‐ばらい ‥ばらひ【所払】

〘名〙 江戸時代追放刑一種居住町村から追放し、立入りを禁止する軽罰。ところがまえ。
※雑俳・川傍柳(1780‐83)五「にぎりめし喰ひ喰ひ所払ひ也」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「所払」の意味・わかりやすい解説

所払
ところばらい

江戸時代の自由刑一つ。一種の追放刑で,最も軽いものの一つである。人別帳記載なく寄留した者,または寄留させた者,妻に離縁状を与えずに離縁して再婚した者などに科した。在方では居村 (いむら) 払,江戸では居町払で,武士,庶民ともに適用された。これに処せられた債権者は,みずからはその債権行為ができず,また近親債権を譲渡し,これに出訴させることはできたが,闕所 (けっしょ) が付加された場合は債権そのものが消滅した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「所払」の意味・わかりやすい解説

所払
ところばらい

江戸時代の追放刑の一つ。罪人に対し、居住していた地域(居村・居町)へ立ち入りすることを禁止した刑。年貢未納などの場合を除いては財産没収(闕所(けっしょ))が付加されることもなく、追放刑のなかではもっとも軽かった。この刑に該当する罪は、関八州(かんはっしゅう)外で発砲した場合、人別(にんべつ)帳に記載せず寄留したりさせたりした場合、妻に離縁状を与えずに再婚した場合、などであった。

大石 学]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「所払」の解説

所払
ところばらい

江戸幕府の追放刑の一つ。当初は追払と称したが,1721年(享保6)に改称。追放刑のなかでは最も軽いもので,居住する町村から追放し,そこへの立ち入りを禁止した。京都の洛中払,堺の堺払が相当する。適用範囲も広く,「公事方御定書」にも,多くの犯罪があげられている。原則として,付加刑としての闕所(けっしょ)はないが,利欲にかかわる犯罪の場合は田畑・家屋敷が,年貢未進の場合は家財も闕所とされた。

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百科事典マイペディア 「所払」の意味・わかりやすい解説

所払【ところばらい】

江戸時代の追放刑の一つ。居住地への立入りを禁止する。追放刑のうちで最も軽いもので,離縁状を妻に与えないで再婚したものなどに科した。→刑罰
→関連項目離縁状

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世界大百科事典(旧版)内の所払の言及

【追放】より

…戦国期にも追放刑が多用され,江戸時代に受け継がれて幕府法,藩法,その他旗本など領主法上の制度として定着した。 江戸幕府の《公事方御定書(くじかたおさだめがき)》は6段階の追放刑,すなわち重追放(おもきついほう),中(なかの)追放,軽(かるき)追放,江戸十里四方追放,江戸払(えどばらい),所払(ところばらい)を掲げ,各刑について御構場所(おかまいばしよ)(立入禁止の地域)を定めている。重追放は武蔵,相模,上野,下野,安房,上総,下総,常陸,山城,摂津,和泉,大和,肥前,東海道筋,木曾路筋,甲斐,駿河を,中追放は武蔵,山城,摂津,和泉,大和,肥前,東海道筋,木曾路筋,下野,日光道中,甲斐,駿河を,軽追放は江戸10里四方,京,大坂,東海道筋,日光,日光道中を,それぞれ住居の国および犯行の国とあわせ御構場所とする。…

【所】より

…これは都市的な性格をもつ地であるが,若狭国太良荘の1270年(文永7)の百姓等申状に〈所を煩わす〉,1334年(建武1)の申状に〈所は荒廃地〉〈本(もと)より所狭く減少の地〉とある〈所〉は,在家の集まる農村の集落をさす。《山家集》の〈ところにきはふ〉,《太平記》の〈所の地頭強うして〉,さらに降って所質(国質・所質),所払の〈所〉もこれで,民俗語彙のトコログミも同じである。所は〈在所〉にも通じ,江戸時代以降,都を離れたいなかを意味するようになるが,さかのぼって《塵芥集》の〈在所〉は門・垣をめぐらし,竹木で囲まれた家・屋敷でアジール的機能をもつと解しうるので,中世の所についても,同様の性格を備える場合が少なからずあったと見てよかろう。…

【目安裏判】より

…裏書押印を与えられた目安は,訴訟人がみずから相手方の属する町村役人宅へ持参して送達する。これを受領した相手方は〈拝見書〉(裏書拝見書,尊判拝見書)を訴訟人に渡し,返答書を作成して目安とともに奉行所に提出する(目安の受領を拒否すれば所払(ところばらい)に処せられる定めである)。裏書で指定された期日(差日(さしび))には両当事者が奉行所に出廷し,対決審問を受けるのであるが,差日以前に内済することもあった(訴訟中内済,裏書中内済)。…

※「所払」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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