地表流の浸食により形成された小谷。斜面に降った雨は流下する途中でわずかな凹地に集中し,無数の流れの筋をつくる。この筋は細溝(さいこう)(リルrill)と呼ばれ,雨のたびに水が集中して深く削られ,急な谷壁を持つV字型の小谷が形成される。さらに谷頭浸食も加わって,谷の長さも大きくなる。このようにして形成された小谷を雨裂といい,ガリgullyとも呼ぶ。雨裂は降雨時に急激に形成され,その中を濁流が流下するが,降雨後はたちまち減水し,流水がみられなくなることが多い。火山灰地,乾燥地域や花コウ岩地域などのように土壌の発達が悪く,固結していない堆積物からなる地域に形成されやすく,また,植被や表土の一部が人為的にはがされたところにもできやすい。日本では沖縄県のパイナップル畑造成地に雨裂が形成され,赤土が流出してサンゴを死滅させたり,白い砂浜を赤く染めている。また,首都圏や近畿圏では,造成中の宅地から雨裂浸食によって流出した土砂が小河川を荒らしている例も多い。
執筆者:松田 磐余
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…雨食rain washは雨水が直接に土地を削り取る作用で雨洗ともいう。雨食には降雨が衝突して土を動かす雨滴浸食splash erosion,雨水が地表を流れて細流(リルrill)となり,土粒が動かされて地面に浅いくぼみがつく細流浸食(rill erosionリル・エロージョン),幾多の細流が地面を覆って広がる布状洪水sheet floodによって土地が全体的に浅く削られる布状浸食sheet erosion,さらに細流が集中して雨裂(雨溝,ガリーgully)を刻むガリー浸食gully erosionが含まれる。雨食が目だって作用するのは火山麓のような緩傾斜面や大陸台地のような平たん面や段丘面などであり,河川の谷頭よりも相対的に上位にあたる場所におこる。…
…そのようなわずかな水が流れている所で大きな谷を形成することはできない。谷のでき始めは雨が降ったときだけ水が流れる細い溝が地表面に刻まれたときで,その溝を雨裂という。雨裂が深くなり,幅を増すとしだいに小さな谷に成長する。…
※「雨裂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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