四季折々の自然の風物のなかで、もっとも雅趣あるものとされるものの総称。白楽天の詩に「雪月花の時に最も君を憶(おも)う」などとあるように、東洋的な風雅の心を抽出した概念の集約であるが、限定的には、春の桜、秋の月、冬の雪をいい、風流韻事の最たるものとして、平安時代以来、日本人の風雅の心の根幹を形成するとともに、象徴的素材として美的生活を支える基盤となってきた。三枚組の絵の画題となったり、歌舞音曲の三段構成の名に用いられたり、茶道で茶式の名として用いられるのは、こうした伝統の表れである。なお、これらに時鳥(ほととぎす)を加え、より限定的には、「春の花、秋の月、雪の曙(あけぼの)、夕さりの時鳥」といって賞した。
[宇田敏彦]
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…この種の美学が,必ずしも日本独自のものではなく,元来は古代中国以来の美意識を継承するものであったにせよ,とくに日本の詩歌の中で洗練されてきたことは否定できない。明治以降の近代においても,われわれはたとえば〈雪月花〉という季題の三文字によって,日本の自然の美を簡潔に要約して語ることに慣れている。現代俳句が,無季を標榜する俳人たちを内部に少数派として抱えながらも,大勢としては依然として俳句歳時記をかたわらに置き,季題・季語の宝庫に日夜出入りしている厖大な作句者たちによって支えられていることは,1000年以上に及ぶこの精緻な〈詩語の体系〉の威力を物語るものであろう。…
※「雪月花」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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