ラングミュア(読み)らんぐみゅあ(英語表記)Irving Langmuir

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラングミュア」の意味・わかりやすい解説

ラングミュア
らんぐみゅあ
Irving Langmuir
(1881―1957)

アメリカの物理化学者。界面化学の開拓者。ニューヨーク州ブルックリンに生まれる。コロンビア大学冶金(やきん)工学科で学んだのち、ドイツゲッティンゲン大学に留学し、ネルンストの指導を受けた。1909年ゼネラル・エレクトリック社の研究所に入り、タングステン電球や真空管中の気体の研究を行い、1913年ガス入り電球発明した。また蒸発凝縮吸着などに関与する力は化学結合の力と同種のものであると論じ、単分子層吸着の概念を提出、固体表面の吸着速度と蒸発速度の間に平衡が成立するとして有名な「ラングミュア吸着等温式」を導いた。その第一論文は1916年、第二論文は翌1917年発表され、ここに界面化学という新しい分野が開かれた。1921年この理論を触媒反応に適用し、固体の触媒作用の物理的基礎を初めて解明、この理論はのちにヒンシェルウッドによって拡張された。界面現象と関連して化学結合の問題を考察し、1919年にはG・N・ルイス原子価理論を発展させて多くの物質の化学的性質を説明した。今日の化学結合論の先駆として評価されている。そのほか真空計、凝結式ポンプ、高圧整流管の発明、ラングミュアの水槽や固体表面上に累積膜をつくるラングミュア‐ブロジェット法の考案、ヨウ化銀による人工降雨の研究もあり、所有した個人特許の数は138に及ぶ。1932年界面化学の業績によりノーベル化学賞を受賞した。

[常盤野和男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラングミュア」の意味・わかりやすい解説

ラングミュア
Langmuir, Irving

[生]1881.1.31. ニューヨーク
[没]1957.8.16. マサチューセッツ,ハルマウス
アメリカの物理化学者。コロンビア大学で金属工学を学び,ドイツのゲッティンゲン大学で W.ネルンストに師事,1906年学位取得後,ゼネラルエレクトリック社スケネクタディ研究所入所 (1909) 。ガス入り電球の発明 (13) ,高圧整流管ケノトロンの発明 (15) のほか,化学吸着の発見 (16) ,吸着等温式 (18) ,表面反応の速度式 (22) を提出するなど,界面化学の理論的発展に貢献。また原子の電子配置について八隅説を唱えた (16) 。ヨウ化銀と固体炭酸を用いた人工雨の研究 (46) でも知られる。 32年ノーベル化学賞受賞。

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