韓信の股くぐり(読み)かんしんのまたくぐり

精選版 日本国語大辞典 「韓信の股くぐり」の意味・読み・例文・類語

かんしん【韓信】 =の 股(また)くぐり[=が股(また)

(韓信が、若いとき町で無頼の徒に辱しめられ、その股をくぐらされたが、よく忍んで後年大人物となったという故事から) 大志ある者は目前の恥を耐え忍ばなければならないという意。
※浄瑠璃・源氏大草紙(1770)二「韓信が股漂母の食(じき)、皆勘忍を守りし故」

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故事成語を知る辞典 「韓信の股くぐり」の解説

韓信の股くぐり

大きな目的を実現するために、小さな恥辱を受けてもがまんして、争わないで受け流すことのたとえ。

[使用例] 初め五六度は夫人もちょいと盾ついて見しが、とてもむだと悟っては、もはや争わず、韓信流に負けてふくし[徳冨蘆花*不如帰|1898~99]

[使用例] 韓信が 股をくぐつた 末見やしやんせ 踏まれた草にも 花が咲く[湯朝竹山人*俚謡|1915]

[由来] 「史記わいいんこう伝」に見える、漢王朝の創業に大きな功績を挙げた将軍、韓信のエピソードから。韓信は若いころ、働きもせずに食べ物を他人から恵んでもらって暮らしていたので、みんなに軽蔑されていました。あるとき、彼がいつも剣を身につけているのを見た無頼の若者が、「死ぬのが怖くないという勇気があるんだったら、その剣でおれを刺してみろ。できないんだったら、おれの股をくぐれ」とけんかをふっかけてきました。すると、韓信はじっと相手を見つめたあと、何も言わずに腹ばいになって股をくぐったので、町中の人に臆病者だと笑われてしまいました。後年、将軍として大成功を収めた韓信は、かつての若者を呼び寄せて取り立ててやり、「あのときは、この男を殺しても何の得にもならなかった。だからがまんしたのだ。その結果、現在の私があるのだ」と言ったということです。

[解説] ❶股をくぐる前に、相手をじっと見つめる韓信の視線が、何とも印象的。「史記」のさりげない人物描写が冴えわたる一節です。❷韓信にまつわる話から生まれた故事成語としては、ほかに「背水の陣敗軍の将は兵を語らず千慮の一失金石の交わりなどもあります。

〔異形〕韓信ふく

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ことわざを知る辞典 「韓信の股くぐり」の解説

韓信の股くぐり

大志を抱く者は、小さな恥辱には耐えなければならないというたとえ。

[解説] 韓信が、若いころ人の股をくぐらされるという屈辱に耐えて、後年大成したという「史記―淮陰侯伝」に見える故事によることば。

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