音痴(読み)オンチ

デジタル大辞泉 「音痴」の意味・読み・例文・類語

おん‐ち【音痴】

生理的欠陥によって正しい音の認識発声のできないこと。
音程調子が外れて歌を正確にうたえないこと。
あることに関して感覚が鈍いこと。また、その人。「方向音痴

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精選版 日本国語大辞典 「音痴」の意味・読み・例文・類語

おん‐ち【音痴】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 生理的障害によって正しい音の認識と発声のできないこと。また、その人。転じて、一般に音楽のわからないことや歌などの下手なこと。また、その人。
    1. [初出の実例]「谷口五郎の調子外れ、加藤高茂のドラ声、大下、富永の音痴(オンチ)」(出典:熱球三十年(1934)〈飛田穂洲〉父子の情愛)
  3. ( 転じて ) ある分野に関して、不得意だったり、感覚がにぶかったりすること。また、その人。
    1. [初出の実例]「情熱を傾けている詩そのものについては、どうも音痴であった」(出典:才女の喪服(1961)〈戸板康二〉求婚)

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改訂新版 世界大百科事典 「音痴」の意味・わかりやすい解説

音痴 (おんち)

大脳の先天的音楽機能不全の状態聴覚言語など,ほかの精神的・肉体的機能が健常で,特に音楽的能力だけが劣っている場合をいう。これに対して,かつて音楽能力があった者が疾病外傷など何らかの原因によってその能力を失った場合を〈失音楽症〉という。音痴の原因は,大脳右半球に推定される音楽中枢発育障害による機能不全であるとされ,遺伝と環境の双方に起因するものとみられているが,医学的には未解決である。音痴は感覚性音痴と運動性音痴に大別される。前者は,音楽の認知,理解,記憶に障害があるために音高リズムの感受そのものが不可能な状態を言い,後者は,音高の連続的変化のパターンを組み立てる運動統合中枢に支障があるため,歌うと調子はずれになるものを言う。しかし,俗に音痴といわれるのは難しい音程をうまく歌えない場合であり,正しい訓練や音楽環境をつくることで,矯正は可能とされている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「音痴」の意味・わかりやすい解説

音痴
おんち

音楽が不得意であること、またそのような人に対して軽蔑(けいべつ)や謙遜(けんそん)の意味を込めていう俗語。大正初期の一高生による造語か。音の高さの弁別や表出が不正確であることをさすことが多いが、転じてリズム音痴、方向音痴などのように、他の音楽側面や音楽以外の感覚に対しても使われる。病理学的には感覚性音痴と運動性音痴が区別される。前者は音高、拍子、リズム、音量などを聞き分ける能力がない、または不完全なものをさし、後者はそのような感覚はあっても、いざ歌うとなると正しく表出できないものをさす。これらは大脳の先天的音楽機能不全であるとする説もあるが、環境の変化や訓練によって変わるし、しかも幼少時期にとくに変わりやすいので、むしろ後天的な要因のほうが大きいと思われる。とすれば、ある社会のなかで音痴といわれる人も別な社会に行けば音痴でないこともありうることになる。とくに軽症の場合は心因性のことが多いので、劣等感を取り除くべく練習を重ねれば文化に応じた音楽性が身につく。身体発育の段階によっては、声域異常や嗄声(させい)(しゃがれ声)などの音声障害のため音痴と誤解されることもあるが、楽器の操作は正しくできることもある。音楽能力が以前にはあったのに疾病により音痴となった場合のことを失音楽症という。

[山口 修]

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百科事典マイペディア 「音痴」の意味・わかりやすい解説

音痴【おんち】

大脳の先天的音楽機能不全の状態。狭義には,音高の弁別力の弱いものをいうが,リズム音痴という言葉が示すように,音楽のさまざまな局面,情況において,弁別力の弱いものをさす。声を出して歌う場合に音程が不確かなものには,もともと音の感覚が欠如している場合と,感覚はあっても再生の際に異常をきたす場合とがある。

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