頼納(読み)たのみおさめ

精選版 日本国語大辞典 「頼納」の意味・読み・例文・類語

たのみ‐おさめ‥をさめ【頼納】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代の田地質入方法一つ。質入主は高額の質金を借り入れる代わりに質地年貢諸役を負担し、質取主はその土地からの収穫全部を自分利得とする方法。多額の質金を借りることができたが、幕府はこれをきびしく取り締った。
    1. [初出の実例]「田畑永代売御仕置〈略〉一、質に取候者は作り取にして、質に置候者より年貢役相勤候得は、永代売同前之御仕置、但頼納買といふ」(出典:御触書寛保集成‐四四・寛永二〇年(1643)三月)

らい‐のう‥ナフ【頼納】

  1. 〘 名詞 〙たのみおさめ(頼納)
    1. [初出の実例]「我邦の頼納(ライナフ)英国のコムモン・レカヴァリー等と云ふ何れも是れであります」(出典:国民経済講話‐乾(1917)〈福田徳三〉一一章)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「頼納」の意味・わかりやすい解説

頼納(たのみおさめ)
たのみおさめ

らいのう」ともいう。江戸時代における不動産質入れの方法の一種。頼納質の略。田畑地を質入れする際、債務者(質入人、地主)は、通常相場よりかなり高額の質金を受け取り、その代償として当該地の年貢諸役は旧来どおりすべて負担し、他方債権者(質取人、金主)は、質取りした農地を自分で耕作しながら年貢はいっさい納入しないケースをいう。この方法によると、農地の耕作者と年貢負担者とが乖離(かいり)し、しかも後者には年貢確保の手だてがなく、納入に支障をきたすところから、江戸幕府は1643年(寛永20)に田畑永代売買といっしょにこれを禁止した。なお、債務者が質金を少なく受け取って質入地を直小作(じきこさく)し、諸役は債務者が、年貢は債権者が上納するケースを半頼納というが、これも1687年(貞享4)に禁止された。

[大口勇次郎]


頼納(らいのう)
らいのう

頼納

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「頼納」の意味・わかりやすい解説

頼納
らいのう

「たのみおさめ」ともいう。江戸時代の耕地質入れの一種。質入主は通常の相場よりも多く金銭を借り,質取主がその土地を耕作して全収穫を取得した。その耕地の年貢諸役は質入主が負担した。幕府は弊害があるとして,寛永 20 (1643) ,貞享4 (87) 年これを禁止した。 (→直小作 )

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