額面株式無額面株式(読み)がくめんかぶしきむがくめんかぶしき

改訂新版 世界大百科事典 「額面株式無額面株式」の意味・わかりやすい解説

額面株式・無額面株式 (がくめんかぶしきむがくめんかぶしき)

額面のある株式,すなわち定款に1株の金額の定めがあり(商法166条1項4号,同条2項),かつ株券券面額が表示される(225条4号)株式を額面株式といい,額面のない株式,すなわち株券に券面額の記載がなく,単にその表章する株式数のみが記載される株式を無額面株式という。いずれも1株は1株として等価値であって,会社に対する権利の内容はその間になんらの差異もない。ただ次に述べるように,額面株式については,1株の金額が定められていることに伴う制約が設けられており,その結果,両者の間に差異が生ずる。

 第1に,額面株式の発行価額額面金額を下ることができない(202条2項)。そのため,株式の時価が額面金額を下まわっているときは,額面株式の場合には,上記の制約により発行価額を時価よりも高くしなければならないから,事実上これを発行することは不可能であるが,無額面株式の場合には,そのような制約がないから,時価で発行することが可能である。第2に,株式の発行価額については,いずれの場合もその1/2を超えない分は資本に組み入れないでよく(284条ノ2-2項本文)--その分は資本準備金として積み立てられる(288条ノ2-1項1号)--,額面株式の場合には券面額は必ず資本に組み入れなければならないものとされる(284条ノ2-2項但書)。したがって,たとえば,同じく1株の発行価額が600円だったとしても,無額面株式の場合には300円までは資本に組み入れないでよいが,額面株式の場合には,額面金額が500円だとすると,資本に組み入れないでよい額は100円にすぎないことになる。第3に,株式分割に関して,額面株式のまま分割する場合には,定款記載事項である1株の金額が変更になるから定款変更手続--株主総会特別決議(343条)--が必要であるが,無額面株式の場合には,その必要が生じず,取締役会決議ですることができる(293条ノ4)。

 いずれも1株としては等価値であるところから,会社は取締役会の決議により額面株式を無額面株式とすることが認められ,またその逆も認められる(213条1項)。また額面株式と無額面株式との双方が発行されているときは,株主も定款に別段の定めがないかぎり相互の転換を請求することができる(213条2項。なお,無額面株式を額面株式に転換する場合の制約については213条3項を参照)。

 日本では,従来は無額面株式の発行は例外的であったが,最近,株式分割の便宜のため,額面株式を無額面株式に転換する会社があらわれてきている。

 額面株式の1株の金額は,1981年の商法改正前は500円以上とされていたが,同改正により,この最低限の制限は撤廃され,ただ会社設立時は5万円以上とされる(166条2項)。なお,上記改正法施行時にすでに発行されている株式の額面金額は,1950年改正前商法により設立された会社については大部分が50円,その後設立された会社については大部分が500円となっている。
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