飢・餓(読み)かつえる

精選版 日本国語大辞典 「飢・餓」の意味・読み・例文・類語

かつ・える かつゑる【飢・餓】

〘自ア下一(ワ下一)〙 かつ・う 〘自ワ下二〙
① 食べ物が無くて苦しむ。腹がひどく減ってひもじくなる。
※東寺百合文書‐に・(年未詳)(室町)四月一日・丹波大山荘一井谷百姓等申状「ゐ中之事はうゑかつへ候て、用之夫日之事さへ仕かね候」
② (「…にかつえる」の形で) …に非常に欠乏を感じる。…が足りないと強く感じる。
咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)下「山寺坊主、親しき人にあふて『この程久しく若衆にかつゑて迷惑をいたす』と語る」
[補注](1)室町時代頃から見える語で、終止連体形としてヤ行に転じた「かつゆ(る)」が使われているが、未然形連用形は「かつえ、かつへ」の両形が区別しにくいので、その例は便宜上この項に入れ、「かつゆ」にははっきり区別できる「ゆ」の例だけあげた。→飢(かつ)ゆ
(2)歴史的仮名遣いは定めがたいが、飢(うゑ)語源として、カツヱとするのが通説

う・える うゑる【飢・餓】

〘自ア下一(ワ下一)〙 う・う 〘自ワ下二〙
飲食物が乏しくて苦しむ。空腹になる。のどがかわく。
万葉(8C後)五・八九二「われよりも 貧しき人の 父母は 飢(うゑ)(こ)ゆらむ」
② (多く「気がうえる」の形で用いて) 気力が乏しい。気が弱くなる。
談義本・田舎荘子(1727)猫之妙術「過なる時は勢溢れてとどむべからず。不及なる時は餒(ウヘ)(〈注〉アザレ)て用をなさず」
③ (①を比喩的に用いて) 強く望んでいるものが満たされないで苦しむ。
鳥影(1908)〈石川啄木〉六「詩の話、歌の話、昌作の平生飢ゑてる様な話が多いので」

うえ うゑ【飢・餓】

〘名〙 (動詞「うえる(飢)」の連用形の名詞化)
食欲の満たされない苦しみ。空腹。飢餓
書紀(720)神代下(水戸本訓)「貧窮(まぢ)の本(もと)飢饉(ウヘ)の始め、困苦(くるしび)の根(もと)
② 望んでいるものが満たされない苦しみ。
田舎教師(1909)〈田山花袋三一「かうして心の餓(ウヱ)、肉の渇きを医(いや)しに来た自分の浅ましさを思って」

かつ・ゆ【飢・餓】

〘他ヤ下二〙 (ワ行下二段動詞「かつう(飢)」から転じて、室町頃から用いられた語。多くの場合、終止形は「かつゆる」) =かつえる(飢)
※運歩色葉(1548)「飢 カツユル」

かつ・う【飢・餓】

〘自ワ下二〙 ⇒かつえる(飢)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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