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馬鹿聟 ばかむこ

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世界大百科事典 第2版の解説

ばかむこ【馬鹿聟】

昔話。愚かな聟の振舞いを笑う話。聟はいわゆる入聟とは限らず,結婚相手がある男の総称。聟が嫁の家に行って風俗,習慣,経験の違いから失敗をくりかえすことを笑いの対象にする話型が一般的。例えば,聟が初めての訪問で挨拶の言葉や食事の作法や食物の名を知らずに,嫁の家で愚行をさらけ出す。嫁が懸命に加勢するが,かえって聟の非常識が露見して結婚は不成立に終わる。しかし,一方で嫁が協力者である場合,失敗が全部有効に働いて,聟のすぐれた資質をあらわす結果になり,長者の跡継ぎになる話もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

馬鹿聟
ばかむこ

昔話。愚かな聟の失敗を主題にした一群の笑い話。笑いの趣向により、独立した類型を形成しているが、一連の「一つ覚え」の話がよく知られている。馬鹿聟が、妻の実家に家ほめに行く。妻は、節穴があったら縁起が悪いからお札(ふだ)を張るとよいといえと教える。そのとおりにして褒められる。後日、牛ほめに行く。牛の尻(しり)を見て、穴にお札を張るといいといって笑われる。「馬鹿聟」は愚人譚(たん)の一つで、主人公は聟にしなくても成り立つ。噺本(はなしぼん)『初音草噺大鑑(はつねぐさはなしおおかがみ)』(1698)や落語の「池田の牛ほめ」(東京では「牛ほめ」)ではただの愚かな男であるが、古い噺本『醒睡笑(せいすいしょう)』(1623)では、やはり聟である。能狂言でも、聟を笑いものにする話は多い。この種の「馬鹿聟」型の類話は、朝鮮や中国にもいろいろみられ、インドではサンスクリット文学の『カター・サリット・サーガラ』にあり、漢訳経典『百喩経(ひゃくゆきょう)』にもみえる。入れ知恵をするのは妻で、しくじる場所も妻の実家であることが多い。「馬鹿聟」は「和尚(おしょう)と小僧」と同じく、「笑い話」の登場人物の基本形式の一つであった。
 東アジアのこれらの地域には並行して「馬鹿嫁」もみられる。聟や嫁は、親しい家族のなかの新しい異端者として、日常生活の習慣にもなじまず、違和感が強い。そうした現実が誇張されて、笑いの素材になり、聞き手の共感をよんだのであろう。「一つ覚え」は単純な趣向であるが、西アジアからヨーロッパにも広くみられる。笑い話がいかに伝統の力に束縛されているかがわかる。[小島瓔

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