日本大百科全書(ニッポニカ) 「高層気象学」の意味・わかりやすい解説
高層気象学
こうそうきしょうがく
aerology
高層大気の構造や高層大気中の現象を研究する学問。山地での気象観測や気球による自由大気(地表面摩擦の影響を受けない高さ約1キロメートル以上の大気)の観測が始まってから20世紀初期にかけては未知の現象が多く、気象学の一部門として重視された。
高層気象学は、1891年にオーストリアのハンにより、山地の気象観測の結果から高・低気圧は熱的でなく力学的な成因により生じたという理論が出され、1893年、フランスのエルミットGustave Hermiteの探測気球や、1927年のフランスのイドラックPierre IdracとビュローRobert Bureau(1892―1965)のラジオゾンデ開発などによって急速に進歩してきた。とくに、1899年のテースラン・ド・ボールによる成層圏の発見は、高層大気の認識を一変させた気象学における一大発見で、高層気象学の価値を高めた。しかし、それによって気象学全般が大気の立体構造を研究するようになったので、20世紀後半に高層気象学は気象学のなかの独立した一部門としての地位をしだいに失った。
そのため、高層大気の定義も高層気象学の定義も研究者によってまちまちである。そして、1980年代に入ると、一般の気象学が対象としない高さに未知の研究領域を求め、この領域を超高層大気とよんだり、そうした研究分野をエアロノミーaeronomy(超高層大気物理学)とよんだりしている。しかし、その定義はかならずしも明確ではない。また、観測機器のほとんどが電波機器であるため、その観点からいえば、高層気象学は電波気象学の一つでもある。
[股野宏志]
『北岡竜海著『高層気象学』(1956・地人書院)』▽『気象庁編・刊『高層気象観測指針』(1995~ )』▽『福地章著『高層気象とFAX図の知識』8訂版(2001・成山堂書店)』▽『阿保敏広著『高層気象観測業務の解説』(2001・気象業務支援センター)』