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高層大気 こうそうたいきupper atmosphere

翻訳|upper atmosphere

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

高層大気
こうそうたいき
upper atmosphere

明確な定義はないが,日本の気象分野では対流圏下部から上層を意味する場合が多い。特に,5hPa以上の大気超高層大気と呼び区別することもある。高層大気の性質は,気球による探測(約 30kmまで)や発煙弾(約 30kmまで),ロケット(約 120kmまで),爆発音(約 35~60km),電波による探測(約 70~500km),レーザーレーダなどによる直接的観測や人工衛星からの遠隔測定によって調べる。また,流星現象(約 40~150km),オゾン層による太陽紫外線の吸収(約 20~60km),夜光雲(約 70~90km),気圧振動(約 50~400km),地球磁気変化(約 70~100km),夜光(約 60~500km),極光(約 80~1000km)などの現象から間接的に調べる。気温の垂直分布についてみると,成層圏では高さとともに上昇し,50~60kmの層に最高が現れ,しだいに下降して約 80kmの高さに最低が出現し,その後高さとともに再び上昇がみられる。電離層上部では絶対温度 100~1000Kの間で変化する。近年,気象学超高層大気物理学の学問的発展に伴って,双方の境界領域である成層圏・中間圏が力学,放射,光化学などを含めて総合的に研究されており,この層を中層大気と呼ぶ。

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百科事典マイペディアの解説

高層大気【こうそうたいき】

地上約1kmより上の大気。気象観測総観気象学で使われる用語。対流圏の上の大気圏を高層大気ということもある。→大気成層超高層大気

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

高層大気
こうそうたいき
upper atmosphere

地表面摩擦の影響を受けない高さ1キロメートル以上の大気(自由大気)のうち、地上付近の空気の組成が保持されている高さ80キロメートルまでの大気。ただし高層大気の定義は研究目的や業務目的によって前記の定義と異なるものがある。たとえば、前記の一般的な定義より高い大気(約80キロメートル以上)を単純に超高層大気とよぶ場合もある。また、通常の予報業務で地上天気図に対する高層天気図は普通250ヘクトパスカル天気図が上限である。250ヘクトパスカルの高さは約10キロメートルで、成層圏(約10~50キロメートル)と対流圏(約0~10キロメートル)の境界、すなわち圏界面付近であるから、高層大気には違いないが、相対的には下層大気とよべよう。一方、空気の分子量が激減する境目(約120キロメートル)に着目して、それ以上の高さの大気を未知の研究領域が広がっている真の高層大気と考えると、成層圏・中間圏(約50~80キロメートル)を含む熱圏(約80~500キロメートル)の下部約120キロメートルまでの大気は中層大気とよばれる。このように高層大気の定義がまちまちなのは研究のために使用される観測機器の性能とそれによって得られる観測成果の多様性によって高さの決め方が異なるからである。以下に「観測機器」の大要と観測によって得られた「高層大気の性状」および「高層大気中の諸現象」のおもな事項を述べる。[内田英治・股野宏志]

観測機器

高層大気中の諸現象は、1927年(昭和2)から始まったラジオゾンデ観測、1946年(昭和21)からのロケットゾンデ観測、さらにリモート・センシング(レーダーや人工衛星)技術や航空機などの進歩によって次々と発見された。高層大気の性状や高層大気中の諸現象の解明に開発されてきた観測機器は次のとおりである。
(1)パイボール 小型ゴム気球に水素を充填(じゅうてん)して放球し、一定時間ごとに経緯儀(セオドライト)で、方位と距離を測定し、風向、風速を観測する。
(2)レーウィン 小型発振器を気球に取り付け自動的に操作して風(風向、風速)を測定する。
(3)レーウィンゾンデ 風のほかに気温、湿度、気圧観測用の機器を搭載して、電波で測定値を地上まで送信する。
(4)オゾンゾンデ 高層のオゾン量を測定する。
(5)低層ゾンデ 地上2~3キロメートルまでの気温、湿度、風を測定する。
(6)ロケットゾンデ 気象ロケットの先端部からパラシュートをつけたゾンデが発射され、高度約60キロメートルまでの大気の状態(気温、風)を測定する。
(7)その他のゾンデ トランソゾンデ、エコーゾンデ、大気電気ゾンデ、露点ゾンデ、放射ゾンデ、ドロップゾンデ、オメガゾンデなどがある。
(8)ロックーン ゾンデの到達高度よりロケットを発射して、より高度の気象状態を測定する。
(9)係留気球 普通、高度30キロメートルまでの気象状態を測定する。
(10)レーダー、レーザー・レーダー(ライダー) レーダー(ミリ波、ドップラーレーダー、ソーダー、ドップラーソーダーなどを含む)では雲や乱流などの分布を、また、ライダーでは煙やエーロゾル(浮遊微粒子、煙霧質。エアロゾルともいう)などの分布を観測する。
(11)気象衛星 極軌道衛星(タイロスN)で気温、水蒸気などの鉛直分布を測定する。また「ひまわり」などの静止気象衛星により、雲の種類、高度、海面水温、雲による風ベクトル、太陽プロトンなどを測定する。
 日本における高層観測は18か所で行われている。9時、21時はレーウィンゾンデ観測、3時、15時はレーウィン観測、そのほか6か所でパイボール観測だけを行っている。その際、国際標準時刻は、グリニジ時の0時と12時にゾンデが500ヘクトパスカル面を通過する時刻と定められているため、ゾンデの放球はこの時刻の30分前に行われている。台風接近時には臨時の高層観測(レーウィンをレーウィンゾンデに切り換える)を行う。[内田英治・股野宏志]

高層大気の性状

高層観測によって判明した高層大気の性状は次のとおりである。
(1)上層は下層より一般に風速は大きい。そして上層の風向はそこの等圧線に平行に吹く。
(2)上層の広い範囲で気流は比較的単純な体系を示している。
(3)上層と下層の大気はかなり明確な関係があると考えられる。
(4)高度約10キロメートル以上では気温は高さとともに減少することなくほぼ一定で、気流は成層をなしている(ゆえに成層圏という。これに対して地上に近い下層の大気中では、対流が卓越するので対流圏という)。[内田英治・股野宏志]

高層大気中の諸現象


(1)対流圏の上層部(成層圏との境界の圏界面付近)にジェット気流という強風帯(最大風速は毎秒約120メートル)があって、鉢巻状に水平にうねりながら地球を回っている。
(2)その半球規模の蛇行をロスビー波とよび、理論的解明がなされている。
(3)子午面方向の断面をとると、赤道から北極までの間に対流圏では三つの循環があって、これをハドレー循環とよんでいる。
(4)成層圏では気温は低緯度ほど低く、高緯度ほど高い。
(5)極地方の成層圏ではとくに冬には、寒気を取り巻く西風の渦があり、これを極夜渦(きょくやうず)とよんでいる。
(6)成層圏では短期間に急に気温の上昇する突然昇温という現象があり、下層に伝播(でんぱ)してきて、対流圏の現象に影響を与えている。
(7)低緯度の下部成層圏で、約25か月ごとに東風になったり西風になったりする風系の変換がある。これを準二年周期現象という。
(8)高緯度成層圏には、夜光雲とか真珠母雲とかいう珍しい雲が出現し、高速度で移動する現象がある。
(9)高度10キロメートルから約120キロメートルの中層大気では、下層からの波動の伝播と上層からの熱の輸送および光化学反応が相互に関係しあって、興味深い物理現象を示している。
(10)対流圏下部(高度2、3キロメートル)には下層ジェットというやや強い風系が現れ、梅雨期の大雨に密接な関係がある。
(11)対流圏上層の強いジェット気流の下方では大気の擾乱(じょうらん)(低気圧など)も発達する。
(12)上層と下層の水平風のベクトル差を鉛直シア(風の鉛直方向への変化率)というが、このシアの強いとき、たとえば日本海の北部では雪雲の雲列がシアの方向に並んだり、大雪が降ったりする。これは大陸からの北西の季節風のときにおこる。日本海の南西部ではこの吹き出した風が大陸の山脈の影響を受けたり、日本海の暖流の影響の結果として、かなりの大雪が北陸沿岸一帯にもたらされる。このときの雪雲の雲列は主風向にほぼ直角に並ぶことがある。
(13)気候変動に関して興味あることは、太陽からの高エネルギー粒子(太陽風)が、地球磁場によって極地方の上空に侵入してオゾン層を刺激し、これによるオゾン層の熱収支の変化から下層大気の構造に影響があることが知られている。なお1980年代にオゾンホールの生成と拡大が確認され、これを放置すれば人類の生存にかかわることが危惧(きぐ)された。そのため国際条約「オゾン層保護のためのウィーン条約」が締結され(1985)、オゾン層を破壊するおそれがある物質(たとえばフロン)の製造と使用が全面的に規制されることになった。[内田英治・股野宏志]
『北岡竜海著『高層気象学』(1956・地人書院) ▽気象庁編・刊『高層気象観測指針』(1995~ ) ▽小倉義光著『一般気象学』第2版(1999・東京大学出版会) ▽小倉義光著『総観気象学入門』(2000・東京大学出版会) ▽福地章著『高層気象とFAX図の知識』8訂版(2001・成山堂書店) ▽阿保敏広著『高層気象観測業務の解説』(2001・気象業務支援センター)』

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