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高温ガス炉 こうおんがすろ

知恵蔵の解説

高温ガス炉

ガスは水蒸気と異なり、圧力を高めなくとも高温にすることができる。ガス冷却炉のうち、ヘリウム(He)を冷却材、黒鉛を減速材に使い、原子炉出口温度が700〜950℃の原子炉を高温ガス炉(HTGR)という。また、高温ガス炉のうち、原子炉出口温度が950℃以上になるものを超高温ガス炉(VHTR)と呼ぶこともある。日本では日本原子力研究所開発機構の高温工学試験研究炉(HTTR)があり、2004年4月、原子炉出口温度950℃での運転に成功した。高温であることの利点は、発電効率が通常の原子炉より高まることにある。また、水素製造に利用できる温度でもある。日本を含む世界12カ国と1機関が参加する第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)で、超高温ガス炉は特に有望な炉型として位置づけられた。これを利用した水素製造への取り組みは、米国や欧州で活発になっている。日本では、日本原子力研究開発機構が熱化学法による連続水素製造試験に世界で初めて成功した。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

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デジタル大辞泉の解説

こうおんガス‐ろ〔カウヲン‐〕【高温ガス炉】

減速材黒鉛冷却材ヘリウム燃料被覆材にセラミックスを用い、セ氏700~1000度の高温で運転する第四世代原子炉。高効率で発電できるほか、水を熱化学的に分解し、二酸化炭素を出さずに水素を製造するなど、さまざまな応用が可能。高温ガス冷却炉。黒鉛減速ヘリウム冷却型炉。HTGR(High Temperature Gas Reactor)。
[補説]原子炉出口部分での冷却材の温度がセ氏950度以上になるものは超高温ガス炉(VHTR)と呼ばれることがある。

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世界大百科事典 第2版の解説

こうおんガスろ【高温ガス炉 high‐temperature gas‐cooled reactor】

略称HTGR。高温ガス冷却炉ともいう。冷却材に不活性気体であるヘリウムを用いて,とくに高い冷却材出口温度(たとえば700℃以上)を実現できるよう設計された原子炉。減速材としては黒鉛が使われている。燃料にはカーネル(核)と呼ばれるU,ThあるいはPuの酸化物または炭化物の細粒(直径200~800μm)を熱分解炭素で幾重にも被覆した被覆燃料粒子が使われる。炉心構成法には,六角形の断面をもつプリズム状黒鉛ブロックにあけられた多数の穴の中にこの燃料粒を入れて燃料体とし,これの集合として炉心を構成する方式と,球状の黒鉛マトリックスの中にこの燃料細粒を分散させてつくった燃料球を黒鉛タンクの中に積み上げたいわゆるペブルベッド炉心とする方式とがある。

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大辞林 第三版の解説

こうおんガスろ【高温ガス炉】

冷却材にヘリウムを使う原子炉。水では摂氏300度ほどにしかならないが、ヘリウムガスでは摂氏1000度くらいまで温度を上げられるため、製鉄など産業用に直接利用できる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

高温ガス炉
こうおんがすろ

黒鉛減速ヘリウムガス冷却型原子炉のこと。英文のつづりHigh-Temperature Gas-cooled Reactorの頭文字をとってHTGRともいう。日本では、日本原子力研究開発機構により開発が進められている。また、日本、アメリカなど十数か国の国際協力による「第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF=Generation International Forum)」では、研究・開発課題の一つとして超高温ガス炉(VHTR=Very High Temperature Reactor)が選定されている。
 冷却材温度を700~1000℃に上げ、原子力の多目的利用を図るとともに、熱効率を高める。安全性に優れた発電用原子炉である。炉心は、中性子減速材の黒鉛と、高密度炭素と炭化ケイ素で被覆した燃料粒子で構成されるため、熱衝撃に強く、特有の安全性を示す。すでに停止されたが、アメリカのフォートセントブレイン原発は、電気出力34.2万キロワット、炉心出口温度812℃、熱効率38.5%の高温ガス炉であった。この原子炉のヘリウムガスを15分間停止させても、炉心や燃料にはなんら異状が生じなかった。軽水炉の場合、冷却材喪失事故が起こり、緊急炉心冷却に失敗すると、燃料被覆管の温度は2分以内で1650℃に上昇し、被覆管の破損を引き起こすが、高温ガス炉の場合には、黒鉛が熱を吸収するので、少なくとも1時間経過しないと1650℃には達しない。黒鉛炉心に損傷を与える温度は約2200℃であるが、10時間経過してもこの温度には到達しない。
 アメリカ原子力規制委員会は、スリー・マイル島原発事故(1979)後、原発に専門家をフルタイムで常駐させることを要求しているが、フォートセントブレイン原発にはこの規制は適用されていなかった。高温ガス炉は安全性の高い、十分に余裕のある原子炉である。
 南アフリカ共和国では、ドイツの技術により、高温ガス炉を利用した小型原発が建設中である。世界の原子力発電の流れのなかで、また、福島第一原子力発電所事故の影響下で、高温ガス炉が、将来どのように発展するかは未知数である。[桜井 淳]

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世界大百科事典内の高温ガス炉の言及

【原子炉】より

高温ガス炉ガス冷却炉のうち,冷却材出口温度が高いもの。英語のhigh temperature gas‐cooled reactorを略してHTGRということもある。特にこの名称を用いるべき温度条件は定まっていないが,出口温度が700℃以上でヘリウム冷却である原子炉をいうことが多い。…

【核熱利用】より

…熱源として対応できる主要な原子炉の型式も同図に示してある。 高温ガス炉では高温のヘリウムガスで炉心から熱を取り出す。この熱は高温熱交換器を介して利用側に伝えられ,必要に応じて蒸気発生器に導かれ,プロセス用蒸気や発電用の蒸気がつくられる。…

【原子炉】より

…アメリカで建設されたフォート・セント・ブレイン炉では,冷却材入口温度が338℃,出口温度が761℃,その圧力は約50気圧となっている。このような原子炉を高温ガス炉と呼ぶ。高温ガス炉の炉心には上に述べたプリズム柱状の燃料要素を用いる方式以外に,多数の上述の黒鉛被覆粒子を黒鉛で直径5cm程度の球に成形したものを黒鉛容器にたくさん入れて炉心とするペブルベッド方式もある。…

※「高温ガス炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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