魚価は,魚の価格を指すことはもちろんであるが,一般に,鯨,海藻,貝類等を含めた水産物の価格をいう。魚価は流通段階によって,産地卸売価格,消費地卸売価格,仲卸価格,小売価格などに分けられる。水産物は産地から消費地の小売店に来るまでの間にさまざまな経費がかかり,魚価はこれらの経費を背景にして成り立っている。小売店で販売されるまでの経費を列挙すると次のようなものがあげられる。(1)漁船の燃料油代や人件費など漁業での経費,(2)産地卸売での手数料,(3)運賃や荷造包装などの出荷マージン,(4)消費地卸売での手数料,(5)仲卸のマージン,(6)調理・パックの材料費や人件費などの小売マージン,などである。かつて保蔵・加工施設や運輸機関が発達していなかったときには,大量の水揚げが行われると,魚価は地域的,季節的に極端に安くなり,“大漁貧乏”と呼ばれる現象が頻発した。しかし全国的に冷蔵・加工施設および交通網が整備された現在では,水産物の流通圏は全国化し,季節性も克服されつつある。そのため魚価も地域差,季節差がなくなり平準化する傾向がある。
日本の水産物貿易は,1971年以降輸入が輸出を上回るようになり,80年代には世界の水産物輸入の1/4を日本が占めるまでになった。そのため日本の輸入動向や買付価格が国際市場の市況を大きく左右するようになる一方,輸入水産物が国内水産物と強く競合し,国内魚価を規制するようになってきている。1960年ころから石油危機の73年ころまで,魚価は産地,消費地ともに大幅に上昇した。この間,一般物価も上昇しているが,大部分の魚種の価格は一般消費者物価を大きく上回る上昇率であった。この理由は,多くの水産品目で供給の増大が需要の増大に追いつかなかったために起こったとされている。しかし75年以降は,77年の200カイリ体制に伴う一時的な暴騰期を除き,経済の低成長,所得の伸び悩み等を背景に魚価は緩やかな上昇に変わり,一般消費者物価にほぼ見合った動きを示す。
1975年まで,国民1人当りの魚と肉の摂取量は年々増加し,需要は大きく伸びてきたが,この年以降,伸び率は急に鈍化している。このようなタンパク食料需要の変化のなかで,畜産物と水産物の各種商品は,価格をはじめ品質,サービスの面での競争を激化させており,その競合は今日,次に述べる商品群でとくに顕著である。すなわち,魚価が高くなれば牛肉と競合を起こすと考えられるものは,魚価が牛肉より安く豚肉より高いマグロ類,エビ・カニ,ブリ,タイ,ヒラメなどの魚種である。豚肉と競合すると考えられるものは,魚価が豚肉と同じか,あるいはそれ以下で,かつ鶏肉より高い魚種で,サケ,マス,カツオ,タコ,アジ,イカなど,日常購入する多くのものがこれにはいる。また魚価が高くなれば鶏肉と競合すると考えられるものは,鶏肉より安く鶏卵より高い魚種で,タラ,サンマ,サバ,イワシなど,多獲性魚に代表される魚類である。
→水産業
執筆者:多屋 勝雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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