鶏肋(読み)ケイロク

デジタル大辞泉 「鶏肋」の意味・読み・例文・類語

けい‐ろく【鶏×肋】

《「後漢書」楊修伝による。鶏のあばら骨には食べるほどの肉はないが、捨てるには惜しいところから》たいして役に立たないが、捨てるには惜しいもの。
《「晋書」劉伶伝から》身体が弱く小さいことのたとえ。

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精選版 日本国語大辞典 「鶏肋」の意味・読み・例文・類語

けい‐ろく【鶏肋】

〘名〙
① (「後漢書‐楊修伝」の「夫鶏肋食之、則無得、棄之則如惜」から) ニワトリのあばら骨は食べるほどの肉はないが、少しは肉が付いているので、捨てるには忍びないところから、たいして役に立たないが捨てるには惜しいものをいう。
太平記(14C後)一四「此時義貞朝臣有忿雞肋(ケイロク)之貪心鳥使之急課
星座(1922)〈有島武郎〉「鶏肋のやうなもので、捨てるにもあたらないけれども、仕舞ひ込んでおくには」 〔蘇轍‐送転運判官李公恕還朝詩〕
② (「晉書‐劉伶伝」の「嘗酔与俗人相忤、其人攘袂奮拳而往、伶徐曰、鶏肋不以安尊拳、其人笑而止」から) からだの弱く小さいことのたとえ。

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故事成語を知る辞典 「鶏肋」の解説

鶏肋

たいして役に立たないが、捨てるには惜しいもののたとえ。

[使用例] それは彼にとっては鶏肋のようなもので、捨てるにもあたらないけれども、仕舞い込んでおくにはどこにおくにも始末の悪い代物だった[有島武郎*星座|1922]

[由来] 「後漢書ようしゅう伝」に出て来る逸話から。三世紀、後漢王朝末期の中国でのこと。この時代の随一の実力者、曹操そうそうは、かんちゅうという地域を支配下に入れたのに乗じて、ライバルりゅうが守るしょくの国に攻め込もうかどうしようかと、考えていました。そしてつぶやいたのが、「鶏肋(ニワトリのあばら骨)」という一言。まわりの者がわかりかねていると、楊修という部下が、「ニワトリのあばら骨は、捨ててしまうのには惜しいけれど、食べるほどの肉は付いていないもの。殿様軍勢を引き返すことにされたのだよ」と謎解きをした、ということです。

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普及版 字通 「鶏肋」の読み・字形・画数・意味

【鶏肋】けいろく

鶏のあばら骨。肉少なきも捨てがたい。〔三国志、魏、武帝紀注に引く九州春秋〕夫(そ)れ肋は、之れをらふも則ち得る無し。之れを(す)つれば、則ち惜しむべきが如し。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鶏肋」の意味・わかりやすい解説

鶏肋
けいろく

ニワトリ(鶏)の肋(あばら)骨のこと。食べるほどの肉もないが、捨てるには惜しいという意で、たいして役だつものではないが、捨てるのは惜しまれることのたとえ。中国、三国時代の魏(ぎ)の丞相(じょうしょう)曹操(そうそう)の軍は漢中を平定し、さらに蜀(しょく)の劉備(りゅうび)を討とうとしたが、進撃にも守備にも困難であったため、態度を決めかねていた。そのとき曹操はただ一言「鶏肋のみ」といい、部下たちはその真意を解しかねていたが、ひとり楊修(ようしゅう)だけがその意を悟り、「鶏肋は食えば得るところなく、捨てれば惜しむべきがごとし」といって引き揚げた、と伝える『後漢書(ごかんじょ)』「楊修伝」の故事による。

[田所義行]

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