北アルプスを東西に二分し、山頂と谷底の高度差が一五〇〇―二〇〇〇メートルに達する日本第一のV字谷。中部山岳国立公園の一部をなし、
近世における黒部川上流の山や峡谷の総称で、越後・信濃・飛騨との国境地帯の山や谷、さらに
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富山県東部,宇奈月温泉より上流の黒部川の峡谷。黒部湖域で二分され,東沢谷合流点より上流の〈上ノ廊下〉は登山路のない原始景観そのままの峡谷である。黒部湖より下流の〈下ノ廊下〉は山頂と河床との高低差が1500~2000mもあり,十字峡を中心とする断崖絶壁をえぐった旧日本電力歩道を改良した山道が西岸に通じている。峡谷は隆起に伴う花コウ岩の節理に沿って浸食・形成されたもので,深いわりに花コウ岩の岩肌と流水で明るく,新緑や紅葉が映える。特別名勝・特別天然記念物指定地域は黒部ダム下流から東沢谷合流点までの池平山,劔岳,立山を結ぶ稜線と,鹿島槍ヶ岳,岩小屋山を結ぶ稜線とによって囲まれた地域で,下流の奥鐘山と猿飛峡はその飛地である。峡谷の一般観光は下流部の宇奈月温泉から黒部峡谷鉄道で終点欅平(けやきだいら)までであり,中心地は鐘釣の天然風呂と猿飛を中心とする欅平である。宇奈月温泉は支流黒薙川の黒薙温泉(96℃,単純泉)の豊富な温泉を引湯として利用されている。
執筆者:深井 三郎
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富山県東部を流れる黒部川の宇奈月(うなづき)温泉から上流の峡谷。黒部川が北アルプスの北部を立山(たてやま)連峰と後(うしろ)立山連峰に二分して流れているため、その山頂と谷底の高度差は1500~2000メートルに及び、日本で最深の峡谷地帯を形成している。観光地としての黒部峡谷は、黒部峡谷鉄道が通ずる宇奈月温泉から上流欅平(けやきだいら)までである。この間に黒薙(くろなぎ)温泉、鐘釣(かねつり)温泉、名剣(めいけん)温泉、祖母谷(ばばだに)温泉などがある。欅平より上流、黒部ダム下流域は「下廊下(しものろうか)」で、その中心部はS字峡、十字峡、白竜峡である。このルートは1935年(昭和10)ごろ当時の日本電力の調査ルートで、左岸につけられた足下100メートルの断崖(だんがい)の登山ルートで、一般観光客の探勝はむずかしい。黒部峡谷のもう一つの観光の中心は黒部ダム地域である。黒部ダム上流の東沢谷からは「上廊下(かみのろうか)」で山道もなく、河岸と激流を渡り行く登山者のみのルートである。「下廊下」は、特別名勝・特別天然記念物に指定されている。
[深井三郎]
『深井三郎著『黒部とその山々をゆく』(1968・古今書院)』
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