鼻疽(読み)びそばびそ(英語表記)glanders

翻訳|glanders

家庭医学館 「鼻疽」の解説

びそばびそ【鼻疽(馬鼻疽) Glanders】

[どんな病気か]
 鼻疽菌という細菌の感染によっておこる病気で、本来は、ウマロバラバなどの病気ですが、人獣共通の伝染病で、人間にも感染します。北米、中欧、北アフリカなどにはかなりみられますが、日本では、まれな病気です。
 この病気にかかったウマなどの鼻汁(びじゅう)、唾液(だえき)、潰瘍かいよう)の膿汁(のうじゅう)などが、人間の皮膚の小さな傷や粘膜(ねんまく)に付着して感染します。ウマを扱う人に多い、一種の職業病といえますが、病気のウマの肉を食べて経口感染(けいこうかんせん)することもあります。
[症状]
 感染して3~5日たつと、菌の侵入した皮膚や鼻の粘膜が赤く腫(は)れて痛み、化膿(かのう)して潰瘍になり、付近のリンパ節が腫れます。
 菌はさらに全身に広がり、あちこちの皮膚や粘膜に化膿性の小結節(しょうけっせつ)をつくり、内臓に転移して肺化膿症、肝腫(かんしゅ)、関節炎などをおこし、筋肉にも膿瘍(のうよう)ができ、高熱をだします。敗血症(はいけつしょう)になって生命にかかわることもあります。
 しかし、局所の症状だけのこともありますし、治ったようにみえて再発したり、数か月から年余にわたる慢性経過をたどることもあります。
[治療]
 サルファ剤ストレプトマイシンペニシリンなどが有効です。皮膚の病変は外科的に切開し、洗浄(せんじょう)、消毒します。病気のウマは畜殺し、厩舎(きゅうしゃ)は消毒します。予防接種はありません。

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改訂新版 世界大百科事典 「鼻疽」の意味・わかりやすい解説

鼻疽 (びそ)
glanders

馬鼻疽ともいう。ウマ,ロバ,ラバなどの鼻腔,気管支粘膜,肺,脾,肝,リンパ節,皮膚に結節や膿瘍(のうよう),潰瘍を形成する接触性の伝染病。ヨーロッパ,ソ連,中近東,アジア,南アメリカでかつて流行したが,現在ではアジア,アフリカ,南アメリカで一部に発生がみられる。原因菌はPseudomonas malleiで,ラクダ,ライオン,トラ,イヌ,ヒトにも感染する。鼻腔内への病変のみられることが多いことから鼻疽と呼ばれるが,肺に見られる肺鼻疽,皮膚に起これば皮疽と呼ばれる三つの型がある。潜伏期は3~7日で高熱を伴い,鼻腔や気道粘膜,肺,皮膚などにびらん性潰瘍が形成される。常在地では慢性型のものが多く,両側または片側の鼻孔から灰黄色の膿性鼻汁を垂らし,鼻腔粘膜にびらん性の潰瘍が認められる。診断はマレイン反応としてマレインの点眼が行われている。ツベルクリン反応と同じような方法で作られるマレインを,眼結膜囊へ1~2滴滴下して,充血,浮腫,目やにの有無で判定する。
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百科事典マイペディア 「鼻疽」の意味・わかりやすい解説

鼻疽【びそ】

馬鼻疽とも。元来は鼻疽菌によるウマやロバの家畜法定伝染病。日本には常在しない。ときに人間や他の家畜に伝染する。鼻粘膜や肺に膿瘍(のうよう)が生じ,全身のリンパ系の病変を起こし死亡することが多い。治療にはサルファ剤抗生物質を用いる。

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