千社詣(読み)せんじゃもうで

精選版 日本国語大辞典 「千社詣」の意味・読み・例文・類語

せんじゃ‐もうで‥まうで【千社詣】

  1. 〘 名詞 〙 多くの神社を巡拝して祈願すること。二月の初午(はつうま)の日に、稲荷(いなり)の社に巡拝することが多い。また、その人は千社札を持って行ってこれを神社の社殿などにはりつける。中世、花山法皇が美濃国大野郡谷汲(岐阜県揖斐川町)にある天台宗の寺、華厳寺谷汲観音)に札を納めたことに始まるといわれ、室町時代に流行し、その後すたれたが、江戸時代、安永一七七二‐八一)のころまた流行して、現代でも行なわれることがある。千社参り。千社。

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改訂新版 世界大百科事典 「千社詣」の意味・わかりやすい解説

千社詣 (せんじゃもうで)

1000の神社に参拝することを目的にする巡礼の一種。千ヵ寺詣と混交して,神社寺院の別を問わないのがふつうで,札所(ふだしよ)もとくには定めず,1000という数字にこだわるものでもない。むしろ特色になるのは巡拝者のひとりひとりがそれぞれに意匠をこらした千社札(ふだ)で,特別なくふうをほどこした長いさおの先にこれをつけ,境内の建物のあちこちに貼ってまわる。千社に参拝する風習そのものは平安時代末にもあったが,庶民信仰の興隆のなかで,天愚孔平とか江戸麴町の五吉などのグループにより都市の独特の風俗となったのは,江戸時代も中ごろ以後のことである。はじめのうちは千社札は手書きで,木版刷りにすることもなかったが,この風習が時代の気風にあったのかたちまちに大流行して,天保年間(1830-44)には禁止されたこともある。なお昭和のはじめごろまで,地方では出征兵士の無事を祈って,村の鎮守から家々の屋敷神まで手あたりしだいに参拝する千社参りがはやったこともある。
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百科事典マイペディア 「千社詣」の意味・わかりやすい解説

千社詣【せんじゃもうで】

千社参りとも。各地の神社を巡拝して,祈願の達成を念じ,その数が1000に達するまで行う風習。自分名前,職業,祈願の目的などを記した〈千社札〉を拝殿の柱や梁(はり)にはる。
→関連項目百度参り

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世界大百科事典(旧版)内の千社詣の言及

【数】より

…33は厄年や弔い上げの年忌とされ,49も忌明け,七七日(なななのか),四十九餅など葬送儀礼でよく使われる。100は百日目の食初めとか百度参りといった儀礼や祈願にみられ,1000も千社詣,千社札,千人針,千人結び,千歳飴(ちとせあめ)など縁起のよい数とされている。【飯島 吉晴】。…

※「千社詣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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