Ehlers-Danlos症候群

内科学 第10版の解説

Ehlers-Danlos症候群(先天性結合織疾患に伴う心血管病変)

(3) Ehlers-Danlos症候群
概念
 Ehlers-Danlos症候群はコラーゲンなどの結合織成分の先天性代謝異常により,皮膚の過伸展性・脆弱性,血管脆弱性に伴う易出血性,靱帯や関節の異常な可動性亢進などがみられる疾患である.その原因と症状から,古典型(重症型,軽症型),過伸展型,血管型,後側弯型,関節弛緩型,皮膚脆弱型など10以上の病型に分類されている.心血管の合併症をきたす血管型(Ⅳ型)は薄く透けてみえる皮膚,易出血性,特徴的な顔貌,動脈・腸管・子宮の脆弱性を特徴とする.
病因
 Ehlers–Danlos症候群は,コラーゲン分子またはコラーゲン成熟過程に関与する酵素の遺伝子変異に基づく疾患であり,血管型はⅢ型コラーゲンをコードするCOL3A1遺伝子の変異が病因であり,常染色体性優性遺伝を呈する.
病理
 組織学的に血管壁が異常に菲薄化しており,免疫染色ではⅢ型コラーゲンの染色性の低下がみられる.
 皮膚線維芽細胞培養にてコラーゲンの異常が確認でき,Ⅲ型プロコラーゲン産生,細胞内貯留の異常,分泌の低下,泳動パターンの異常がみられる.
臨床症状
 古典型においては,皮膚の脆弱性,関節の過可動性,血管の脆弱性が主要な症状であり,僧帽弁逸脱がみられることがある.
 血管型では動脈破裂,動脈瘤,動脈解離が,大動脈から末梢の動脈まで発症する.動脈破裂の好発部位は胸腹部大動脈(50%),頭頸部(25%),四肢(25%)である.脳卒中の原因となることもある.
診断
 血管型のVillefranche診断基準の大基準には,動脈破裂,消化管破裂,妊娠中の子宮破裂,血管型の家族歴が,小項目には薄く透けてみえる皮膚,易出血性,特徴的顔貌,早い年代で発症する静脈瘤,頸動脈海綿状動静脈瘻などが含まれる.
経過・予後
 血管型における血管の破裂や解離,消化管穿孔,臓器破裂は成人期になると70%にみられ,動脈や消化管の重大な合併症が発症する平均年齢は23歳である.これらの合併症は突然死,脳卒中,急性腹症,後腹膜出血,分娩時の子宮破裂,ショック状態などの形で現れる.死亡年齢の中央値は48歳であった.
 組織脆弱性のため,身体の衝突を伴うスポーツなどを避けることが賢明である.血管脆弱性のため,手術に伴う合併症の危険性が高く血管手術は勧められず,保存的治療が望ましい.動脈造影もカテーテル挿入部位で動脈破裂や解離を起こす可能性があるため勧められない.造影剤の注入に伴う圧負荷が動脈瘤を形成させる可能性もある.
治療
 高血圧がある場合にはβ遮断薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬などの降圧薬による治療が必要である.[阿南隆一郎・鄭 忠和]
■文献
Prockop DJ, Bateman JF: Heritable disorders of connective tissue. In: Harrison’s Principles of Internal Medicine, 18th ed (Longo DL, et al ed), pp3204-3214, McGraw-Hill, New York, 2012.
Dean JC: Marfan syndrome: clinical diagnosis and management.Eur J Hum Genet, 15: 724-33, 2007.
Cañadas V, et al: Marfan syndrome. Part 1 and 2: pathophysiology and diagnosis. Nat Rev Cardiol, 7: 256-276, 2010.
Loeys BL, et al: Aneurysm syndromes caused by mutations in the TGF-β receptor. N Engl J Med, 355
: 788-798, 2006.

Ehlers-Danlos症候群(先天性結合組織疾患)

 おもにコラーゲンの異常により皮膚や関節の過伸展,皮膚の易出血性,組織の脆弱性亢進などを特徴とする症候群で,身体的所見から診断されるが,遺伝子診断も参考となる.
頻度
詳しいデータはないが5000出生に1例程度であると考えられている.関節の過伸展も軽症例では正常例と区別がつかない.
臨床症状
 現在では古典型(classical),過伸展型(hypermobility),血管型(vascular),側弯後弯型(kyphoscoliotic),関節弛緩型(arthrochalasia),皮膚脆弱型(dermatosparaxis),その他の7型に分類されている.
 古典型ではCOL5A1,COL5A2の変異によるV型コラーゲンに異常を認める.皮膚はビロード状で簡単に指でつまみ上げることができるが,指を離すとすぐにもとに戻ることが特徴である.小さな外傷でも傷口はぽっかり大きく開く.治癒してもその瘢痕は大きく表面は萎縮性である.先天性股関節脱臼や大関節の習慣性脱臼を生じる.
 過伸展型は古典型に比べ皮膚の異常は軽微であり,関節の過伸展が主要徴候である.細胞外基質であるtenascin-Xに異常を認めることがある.
 血管型は頻度は少ないものの,生命予後が最も悪い.動脈破裂,動脈瘤,動脈解離,胃腸穿孔,破裂,そして妊娠中の子宮破裂のリスクを有している.COL3A1の異常による3型コラーゲンに異常を認める.
 側弯後弯型は関節過伸展に加え,脊椎の後弯側弯が強い.眼球にも異常を認める.リジン水酸化酵素の異常によりコラーゲン分子にヒドロキシリジン残基が少ない.
 関節弛緩型は出生時からの極端な関節のゆるみを特徴としている.COL1A1またはCOL1A2の異常のためI型プロコラーゲンのN末端が酵素により切断されなくなることが原因である.
 皮膚脆弱型ではおもに皮膚と筋膜が傷害される.皮膚はたるんでいて高度の脆弱性を認める.Ⅰ型プロコラーゲンのN末端を切断する酵素であるADAMTS2の異常による.
診断
臨床症状から診断・分類される.しかしその臨床症状は幅広く困難なことが多い.遺伝子や蛋白質の生化学的検査が役立つ.
治療
 保存的であり,外傷に注意する.縫合を必要とする場合は通常の2倍程度の時間が必要である.筋力増強は弛緩した靱帯を補強することから重要である.女性の場合,妊娠出産に際し,動脈や子宮の破裂をきたし生命を落とすことが多く,この点の説明が重要である.側弯後弯型ではリジン水酸化酵素の補因子であるビタミンCの大量投与が症状を改善する場合がある.[簑田清次]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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