日本大百科全書(ニッポニカ) 「J-PARC」の意味・わかりやすい解説
J-PARC
じぇーぱーく
日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で茨城県東海村に建設・運営している大強度陽子加速器施設。J-PARCとは、英語のProton Accelerator Research Complex(陽子加速器研究複合施設)の頭文字にJapanのJをつけたもので、施設の愛称として用いられている。2008年(平成20)より稼働。光速近くまで加速した大強度陽子ビームを標的原子などに衝突させて発生する中性子や中間子、ニュートリノなどを使い、素粒子物理、原子核物理、物質科学、生命科学、原子力などの研究に供用されている。大強度陽子加速器として、初段の400MeV(メガ電子ボルト)まで加速するリニアック(直線加速器)、次に3GeV(ギガ電子ボルト)まで加速するRCS(Rapid Cycling Synchrotron円形加速器)、そしてさらに50GeVまで加速するMR(Main Ring円形加速器)が用意されている。これらの加速器からの大強度陽子ビームや、それから生成される2次粒子ビームを用い、各種実験が行われている。物質科学・生命科学研究では中性子やミューオンを使い、水やタンパク質の構造を解析して新薬や化粧品、新材料、リチウムイオン電池、水素燃料電池などの開発に利用している。原子核・素粒子研究では、ハドロンに注目して、ビッグ・バンや質量の起源を研究し、また、スーパーカミオカンデ(岐阜県飛騨(ひだ)市神岡町)に向けてニュートリノを射出して、ニュートリノの質量の精密測定を行っている。次期計画として、放射性廃棄物に含まれる長寿命核種を短寿命核種へ変換させるための技術開発を目ざしている。
[山本将史 2022年2月18日]