公開買付によって株券等の買付け等を行う者が、公開買付の目的・買付価格・買付予定株式等の数・買付期間などを公告して、不特定多数の株主等から株式を買い取る制度。相手企業との関係が友好的であれ敵対的であれ、企業買収のための株式の必要量を入手することから、企業の経営権を取得するための一つの手段とされることが多い。イギリスではテイク・オーバー・ビッドtake-over bidとよばれており、日本ではこれを略してTOBといわれることが多い。なお、アメリカにおいてはテンダー・オファーtender offerとよばれている。
株式を獲得するやり方には、上場企業と非上場企業とで相違がある。上場企業の場合には、証券市場において仲介者(証券会社)によって売買取引が行われ、一方、非上場企業の場合には、前者と比べて手続がむずかしくなるのは避けられない。この制度は、イギリスでは1950年代、アメリカでは1960年代に盛んになり、日本では1971年(昭和46)に資本の自由化に伴って公開買付方法による企業買収が注目を浴びることになった。買付者は買付期間、買付数量、買付価格等をあらかじめ公開呈示することを義務づけられている。
株式公開買付制度は投資家の保護と証券取引の秩序維持を目的として設けられた。この制度のもつ長所としては、短期間で大量の株式を取得可能な点があげられるが、価格が適正かどうかなどの問題も指摘されている。とはいえ、徐々にではあるものの、日本でもTOBを使ったケースが増えつつある。しかし、2005年(平成17)の株式会社ライブドアによるラジオ局ニッポン放送株の購入、および投資ファンド「M&Aコンサルティング」(通称、村上ファンド)の阪神電気鉄道株購入など、本来はTOBを使うべきであるのにもかかわらず、制度的な欠陥をねらった買収事例が散見される。本来、TOBは証券市場にとって非常に重要な制度であり、今後の日本市場の国際化の進展とともに、世界的なTOBも増加する可能性があることから、しっかりとしたルールの確立が必要である。
[桶田 篤・前田拓生]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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