傾斜地を普通作物の栽培に利用する場合の耕作方式の一つで,農地保全を目的として,等高線に沿った階段で耕地を区切り,段畑を設けるものである。この方式を適用した水田は棚田と呼ばれる。各段畑はゆるやかな傾斜をもつものが斜面の利用上有利で工事も容易であるが,水田として利用する場合には水平でなければならない。階段の法面(のりめん)は草を生やして補強するが,傾斜の著しい場合には石組みを利用することもある。一般にテラス栽培といわれるものは,この階段耕作をいうことが多いが,広い意味では緩傾斜地で,耕地を等高線に沿った水路や広幅のうねで仕切る方式をいう場合にも用いられる。傾斜地は降雨などによる土壌浸食が著しいため,通常は森林や永久草地として利用されることが多いが,国土が狭小で人口密度が高い場合には,耕地がしだいに傾斜地に拡大し,階段耕作によって“耕して天に至る”景観が出現する。日本においても,瀬戸内海沿岸地域を中心として階段耕作は全国的に広く見られ,水田における顕著な例として,長野県の“田毎の月”は有名である。しかし傾斜が急であるほど作業能率は落ち,耕作者には過酷な労働を強いる方式でもある。世界的にみると,古くから農業が営まれ,人口密度の高い東南アジアの山岳地帯にその事例が多い。またインカ帝国において,すでに階段耕作の行われていたことが遺構から認められ,その技術水準がしのばれている。
執筆者:山崎 耕宇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…以上いずれの方式も,斜面の傾斜が著しくなると十分の効果を期待できなくなる。このような場合,斜面を階段状に区切って利用する階段耕作の方式が採用される。 なおアメリカの水田地帯では,等高線に沿ってあぜを設置して耕地を区画することが多い。…
※「階段耕作」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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