日本大百科全書(ニッポニカ) 「農地保全」の意味・わかりやすい解説
農地保全
のうちほぜん
land conservation
地表面を覆う土壌は、しばしば水や風の作用によって移動させられる。これを土壌侵食(あるいは単に侵食)とよぶ。このうち、水の作用によりおこるものを水食、風によるものを風食という。さらに侵食が土壌の表層にとどまらず、大規模におこる場合があり、形態や速度によって、地すべり、崖(がけ)崩れなどとよばれる。
農地保全とは、農地の水食そのものや、同時に生じる農地や排水路さらには下流への土砂の堆積(たいせき)などを防ぐためのさまざまな手段であり、これにより農地の生産力を維持・保全することである。
大雨のもとでは、雨滴は土壌を分散させ、浸透しなかった雨水は地表にたまり、流下する。地表面に凹凸がなければ、地表水は斜面に一様に広がり薄層となって流下する。このとき土壌は斜面全域でほぼ一様に流亡する。これを面状侵食という。もし斜面に凹凸があると雨水は窪地(くぼち)に集中し一条の流路を形成する。こうなると雨水はつねにこの流路に集中して流れ、これを深く広く刻む。こうした水食形態の小さいものをリル侵食、発達したものをガリ侵食とよぶ。
水食防止対策は排水路の整備、斜面保護などの土木的手段が主体となる。しかし、作物の等高線栽培、水路の植生などによる被覆、耐食性作物の導入などの保全的営農の効果も大きく、これらを総合的に配慮した合理的な対策が望まれる。風食の対策も水食と同様で、風のエネルギーをなるべく受けないようにし、抵抗力を増すことが基本である。
[山路永司]
『安富六郎・多田敦・山路永司編『農地工学』第3版(1999・文永堂出版)』