SACLA(読み)サクラ

デジタル大辞泉 「SACLA」の意味・読み・例文・類語

サクラ【SACLA】[Spring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser]

Spring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser兵庫県播磨科学公園都市にあるX線自由電子レーザー(XFEL)施設愛称理化学研究所と高輝度光科学研究センター(JASRI)とが共同建設。大型放射光施設SPring-8に隣接して建つ。平成23年(2011)に完成し、波長1.2オングストロームのX線レーザー発振成功。平成24年(2012)3月から供用運転を開始

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「SACLA」の意味・わかりやすい解説

SACLA
さくら

兵庫県の播磨(はりま)科学公園都市にある大型放射光施設SPring-8に併設されたX線自由電子レーザー施設。SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser の略称である。理化学研究所と高輝度光科学研究センターが運営、管理している。2006年(平成18)に建設を開始して2011年に完成し、同年6月にX線自由電子レーザーを発振した。2012年3月から供用運転開始。SPring-8では光速近くまで加速された電子がリングを周回するときに放射する光を利用しているが、この放射光は自然光でレーザー光ではない。SACLA は自由電子を使ったX線領域でのレーザー光を得るために開発された施設であり、新規開発した熱電子銃により高品質な電子ビームを発生させる。その電子ビームを400メートルの直線導管中でSPring-8と同じく80億電子ボルトにまで加速し、X線自由電子レーザーを発振させるアンジュレーターundulatorという装置に入射させる。アンジュレーターでは磁場を周期的に発生させて、電子ビームの軌道を蛇行させ、このときに出る放射光(シンクロトロン光)と電子ビームを共鳴させる。そして最初に出た放射光を使い、共鳴させた電子ビームから出てくる光を位相があったコヒーレント光(レーザー光)に増幅する。

 SACLAの仕様は、電子エネルギーが80億電子ボルト、電子ビームサイズは40マイクロメートル、X線の波長が0.06ナノメートル以上、X線のパルス長が100フェムト秒、X線のピークパワーが5ギガワットである。この明るく、高輝度のX線レーザー光は非常に波長が短く、細かいところまで見えるため、タンパク質の構造解析、細胞生物学での観察、半導体などの微細加工、超高速現象の観察などから、新薬の開発、ナノロボットの開発、ナノテクノロジーを使った環境問題の解決への利用が期待されている。

[編集部 2023年8月18日]

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