緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」 原発事故時に、放射性物質の拡散方向などを風向きや地形、原子炉の状態などから予測するシステム。東京電力福島第1原発事故では、予測の基となる放射性物質の放出データが得られず、使えなかった。ただ、仮定の放出量を基にした予測結果があったのに、政府は直ちに公表しなかった。
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原子力発電所から放射性物質が漏れた際に、放射性物質の広がり方を予測するシステム。正式名称は緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムで、SPEEDIは英語名System for Prediction of Environmental Emergency Dose Informationの略称。原子力発電所から放出された放射性物質の種類や放出量などのデータを入力し、風向きなどの気象状況や地形などのデータを基に周辺地域への飛散予測状況を地図上に明示。15分程度で結果を表示し、向こう84時間先までの予測が可能で、ネットワークを通じて関係省庁、地方自治体、オフサイトセンターに迅速に配信することにより、住民の避難や被曝(ひばく)防止に生かすとされていた。1979年に起きたアメリカのスリー・マイル島原発事故を機に、日本で研究・開発を進め、1986年(昭和61)から運用を始めた。これまで約120億円の研究・開発費を投じており、文部科学省所管の財団法人・原子力安全技術センターが運用している。
2011年(平成23)3月の東京電力福島第一原子力発電所事故では、全電源が喪失したため、放出源のデータを把握できず、SPEEDIの計算ができなかった。さらに当時の文部科学省や原子力安全・保安院は仮定値に基づく予測計算をしたものの、結果を公表したのは事故から12日後の3月23日で、住民避難などに活用できなかった。こうした政府の対応に対し、政府事故調査・検証委員会は「SPEEDIの情報が提供されていれば、自治体や住民は適切に避難のタイミングや方向を選択できた」と批判した。これを受け、政府は2012年9月に中央防災会議を開き、SPEEDIの予測結果の速やかな公開と手順を防災基本計画に明記し、原子力の安全確保を一元的に担う新組織である原子力規制委員会が記者会見やホームページ上でSPEEDIの予測結果を公表することを義務づけた。
[編集部]
(金谷俊秀 ライター / 2011年)
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