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SPEEDI すぴーでぃSPEEDI

知恵蔵の解説

SPEEDI

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)の略称。文部科学省所管の財団法人である原子力安全技術センターが運用する、放射能の影響を予測するためのシステム。原子力発電所などの事故により大量の放射性物質が放出された場合、もしくはその恐れがあるという緊急事態に際して、放出源の情報と周辺地域の気象条件や地形データに基づき、周辺環境における放射性物質の大気中濃度や被曝(ひばく)線量など環境への影響を予測する。
1979年の米国スリーマイル島原発事故を契機に、日本原子力研究所で設計・開発が進められ84年に完成・運用開始。90年からは原子力安全技術センターに移され、改良を経て現在の運用形態となった。2000年には海外で発生した原子力事故の影響を評価したり、放出源情報が不明な場合にこれを推定したりする機能などを有する世界版SPEEDI(WSPEEDI)も整備された。2011年現在は、第3世代SPEEDIとして数値環境システムSPEEDI-MP(Muliti-model Package)の開発が行われている。諸外国では、フランス放射線防護原子力安全研究所、米国エネルギー省(DOE)、オーストリア気象地球力学中央研究所などが、それぞれのデータにより拡散予測を行っている。
SEEDIは、113億円もの巨費を投じて開発され、本来であればオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)や地方公共団体に対して、その名に冠する通り「迅速」に情報が提供され、周辺住民への避難・退避などの指示伝達を行い防災対策を講じるために利用されるはずだった。ところが、11年3月11日に始まる福島第一原子力発電所事故では、同月23日になってようやく積算値のみ公開。原子力安全委員会もデータを受けとっておらず、世論や国会の強い求めを受けた末、5月になってから過去の時点の「予想」など一連のデータが公開された。福島原子力発電所事故対策統合本部の細野豪志事務局長は、データ公開に際しSPEEDIのシステムについて「問題は大いにあったと思う」とし、最も緊急・深刻な時点で多くのモニタリングポストが機能停止した状態でのデータの信用性、さらにはシステム自体に関係者が疑問を持っていたことなどがデータの公開が遅れた背景にあると述べた。システムの見直しもさることながら、信頼性の十分でないシミュレーションデータを公開する弊害を避けるという観点から遅延を是認する意見もあるが、情報公開というばかりでなく、危機管理に際して国家が主権者たる国民をどのような存在として見ているのかという国権の根幹にかかわる問題ではないかとの批判もある。

(金谷俊秀  ライター / 2011年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について | 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

SPEEDI

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム。原発などの事故時に、原発から放出された放射性物質の量や空間放射線量、被曝(ひばく)線量などを気象条件や地形をもとにスーパーコンピューターで予測し、地図上に示す。旧日本原子力研究所が開発し、原子力安全技術センターが1986年に運用を始めた。震災後、文部科学省から規制委に移管。開発や維持に2010年度までで約120億円の国費が投入された。

(2014-08-25 朝日新聞 朝刊 1総合)

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デジタル大辞泉の解説

スピーディ【SPEEDI】[System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information]

System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information》緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム。原発事故が起きたときなどに、大気中に放出された放射性物質の大気中濃度や汚染状況を迅速に計算・予測するシステム。米国スリーマイル島原発事故を契機に日本原子力研究所(現、日本原子力研究開発機構)が開発し昭和61年(1986)から運用開始。平成2年(1990)から原子力安全技術センターが管理・運用。

出典|小学館デジタル大辞泉について | 情報 凡例

百科事典マイペディアの解説

SPEEDI【スピーディ】

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム。福島第一原発の大事故による放射性物質の拡散という危機的状況で,このシステムの予測能力が期待されたが,発表が遅れ内外から批判を浴びた。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

SPEEDI
すぴーでぃ

原子力発電所から放射性物質が漏れた際に、放射性物質の広がり方を予測するシステム。正式名称は緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムで、SPEEDIは英語名System for Prediction of Environmental Emergency Dose Informationの略称。原子力発電所から放出された放射性物質の種類や放出量などのデータを入力し、風向きなどの気象状況や地形などのデータを基に周辺地域への飛散予測状況を地図上に明示。15分程度で結果を表示し、向こう84時間先までの予測が可能で、ネットワークを通じて関係省庁、地方自治体、オフサイトセンターに迅速に配信することにより、住民の避難や被曝(ひばく)防止に生かすとされていた。1979年に起きたアメリカのスリー・マイル島原発事故を機に、日本で研究・開発を進め、1986年(昭和61)から運用を始めた。これまで約120億円の研究・開発費を投じており、文部科学省所管の財団法人・原子力安全技術センターが運用している。
 2011年(平成23)3月の東京電力福島第一原子力発電所事故では、全電源が喪失したため、放出源のデータを把握できず、SPEEDIの計算ができなかった。さらに当時の文部科学省や原子力安全・保安院は仮定値に基づく予測計算をしたものの、結果を公表したのは事故から12日後の3月23日で、住民避難などに活用できなかった。こうした政府の対応に対し、政府事故調査・検証委員会は「SPEEDIの情報が提供されていれば、自治体や住民は適切に避難のタイミングや方向を選択できた」と批判した。これを受け、政府は2012年9月に中央防災会議を開き、SPEEDIの予測結果の速やかな公開と手順を防災基本計画に明記し、原子力の安全確保を一元的に担う新組織である原子力規制委員会が記者会見やホームページ上でSPEEDIの予測結果を公表することを義務づけた。[編集部]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

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