原子力安全保安院(読み)ゲンシリョクアンゼンホアンイン

デジタル大辞泉 「原子力安全保安院」の意味・読み・例文・類語

げんしりょくあんぜんほあん‐いん〔‐ヰン〕【原子力安全・保安院】

平成24年(2012)まで経済産業省に設置されていた行政機関。平成13年(2001)の中央省庁再編に伴い、資源エネルギー庁の特別機関として設置。原子力発電所などの原子力施設や、電力・都市ガス高圧ガス液化石油ガス火薬類鉱山などの施設および産業活動の保安・安全規制を所管。地方機関として各地に産業保安監督部・原子力保安検査官事務所を置き、原子力関連施設に対する安全規制業務は原子力安全基盤機構と連携して行った。平成24年(2012)9月に廃止され、原子力規制委員会へ移行した。NISA(Nuclear and Industrial Safety Agency)。

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共同通信ニュース用語解説 「原子力安全保安院」の解説

原子力安全・保安院

原子力を巡る事故が1990年代に続発したのを受け、複数の省庁に分散していた規制部門を一元化し2001年、経済産業省資源エネルギー庁内に発足。保安院による規制をチェックする、内閣府原子力安全委員会とのダブルチェック体制となった。11年の東京電力福島第1原発事故への対応に失敗し、安全委と共に12年に解体された。原子力を推進する経産省内に規制当局の保安院がある点を問題視する声が事故前からあった。

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百科事典マイペディア 「原子力安全保安院」の意味・わかりやすい解説

原子力安全・保安院【げんしりょくあんぜんほあんいん】

経済産業省資源エネルギー庁に属する特別機関。2001年の中央省庁再編で新設された機関で,原子力発電に関する規制と安全確保を全般的に所掌するほか,電力,ガス,火薬関係の施設や産業活動の安全規制,保安も所管する。立ち入り検査や改善命令の権限を持っている。原子力安全については,それまでの所管である科学技術庁原子力安全局の体制を抜本的に見直して作られた。原子力安全・保安院は,内閣府原子力安全委員会の監視・監査を受ける。2011年3月に発生した,東京電力福島第一原発の大事故で,国の原子力安全と危機管理に責任を持つ政府機関としてその対処に当たっているが,安全規制の設定の甘さ,事故発生後の見通しと対応の遅れ,危機対処にかかわる東京電力に対する指導力不足,情報伝達の混乱など,原子力安全委員会とともに,国内的にも国際的にも批判を浴びている。原子力専門家の不足も指摘された。4月12日,同原発事故による放射性物質の大量放出などからINES国際原子力事象評価尺度)の過去最悪レベルであるレベル7(暫定,4月12日発表)に達する大事故であることを発表した。事故発生時点の院長は寺坂信昭(経済産業省官僚)である。事故後,原子力発電を推進する資源エネルギー庁と規制する原子力安全・保安院がともに経済産業省に属し,省内の異動によって推進と規制を往復する人事交流がなされ,規制対象である電力会社に天下りした退職者が規制行政に干渉するなど,規制機関がその機能役割を果たしていなかったことが強く批判された。この反省に基づき,政府は環境省に新たに外局として原子力規制に関わる部署を設け,原子力安全・保安院と内閣府の原子力安全委員会,文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全課の一部の役割など,原子炉施設等の規制・監視に関わる部署をまとめて移管することを検討,環境省の外局として「原子力安全庁」を新設する案が採用された。法案では,新設機関の名称は原子力規制庁とされ,野田佳彦内閣は,閣議決定をへて12年1月31日に国会に提出した。
→関連項目伊方原発原子力規制委員会原子力発電敦賀原発

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原子力安全保安院」の意味・わかりやすい解説

原子力安全・保安院
げんしりょくあんぜんほあんいん

原子力などエネルギーに関する安全規制や保安を所管した国の行政機関。英語ではNuclear and Industrial Safety Agencyと表記し、略称はNISA。経済産業省設置法第20条に基づき、経済産業省資源エネルギー庁の「特別の機関」として、2001年(平成13)1月、中央省庁再編時に設立された。原子力の安全規制と防災対策を行う原子力安全分野と、電力、都市ガス、火薬類、高圧ガス、鉱山などの産業保安対策を実施する産業保安分野の二つの分野を担った。本院は東京都千代田区霞が関。2012年9月に廃止、その業務の大半を原子力規制委員会が引き継いだ。

 内閣府の原子力安全委員会および経済産業省所管の独立行政法人原子力安全基盤機構とともに、原子力の安全性を規制・監督する機関であったが、2011年3月の東北地方太平洋沖地震の際に発生した福島第一原子力発電所事故の対応で不手際を繰り返した。さらに原発に関するシンポジウムなどで職員が原発推進のための「やらせ」問題を起こしたことも発覚した。また、海外では原子力行政を「規制」する行政機関と「推進」する行政機関が別々にあるのが一般的だが、日本では「規制機関」(原子力安全・保安院)と「推進機関」(資源エネルギー庁)がともに経済産業省に属し、人事交流なども行われていた。そのため、福島第一原発事故後、「規制」と「推進」を分離すべきであるとの世論が起き、2011年3月に菅直人(かんなおと)内閣総理大臣が経済産業省からの分離を検討するよう指示した。2012年、それまでの各府省による原子力の規制に関する行政組織を一元化するため、環境省の外局として原子力規制委員会が発足。原子力安全・保安院は同委員会に移行し、廃止された。

[編集部]

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知恵蔵 「原子力安全保安院」の解説

原子力安全・保安院

経済産業省の外局である資源エネルギー庁におかれた特別の機関であり、略称をNISA(Nuclear and Industrial Safety Agency)とする。原子力などのエネルギー施設や産業活動の安全を確保するために一元的な規制を行うことを使命とし、原子力等の安全及び産業保安の確保を図るための機関である。
2001年の省庁再編によって、原子力の安全規制のあり方が抜本的に見直された結果、それまでの科学技術庁、通商産業省、資源エネルギー庁(いずれも再編前)にあった関連各部門が統合されて設立した機関。国民の安全を確保するために、原子力、電力、ガス、鉱山、火薬などの事業を対象として、これらに内在するリスクを認識し、規制を行い、事故やトラブルを未然に防止することをその役割とする。また、万一の事故に対応して災害の発生防止及び被害の拡大防止に努め、さらに事故の再発を防止する職務に当たる。全国の原子力発電設備、核燃料サイクル施設の近くに「原子力保安検査官事務所」を設置し、「原子力保安検査官」及び「原子力防災専門官」を常駐させて、それぞれの施設に対する安全規制と防災対策を行う。なお、一定の事象(一般には事故のことであるが、国際原子力事象評価尺度ではレベル4以下の事故を特に「事象」と称する)や悪質な不正が起きた原発については立ち入り検査等も実施する。原子力の安全についてはNISAの他に、内閣府の原子力安全委員会(NSC)が安全確保に関する企画・審議・決定を行いダブルチェックの体制をとる。また、経済産業省所轄の独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)はNISAと連携して、原子力施設とその安全確保に関する検査・調査等を行う。
ただし、NISAは経産省に属することからも明らかなように、あらかじめ原子力が必要かつ適正なエネルギー資源の一つであるという想定に立ってその運用上の安全性を確保するための実務的な機関である。このため、その前提そのものを揺るがすような、国民の安全を脅かす重大な原子力事故に際し、統合的な対策について指揮命令する権限も機能もない。2011年の東日本大震災での福島第一原発事故での対応においては、NSCも含め、機能や役割、権限についての妥当性を巡って様々な意見が出されている。

(金谷俊秀  ライター / 2011年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原子力安全保安院」の意味・わかりやすい解説

原子力安全・保安院
げんしりょくあんぜん・ほあんいん

原子力の利用にかかわる発電用核燃料の製造,核燃料再処理放射性廃棄物の処分などの核燃料サイクルや発電用研究開発段階炉に関する原子力安全行政を担当した,経済産業省の一組織。2012年廃止。原子力関連施設の安全審査や指導強化とともに事故の際の対応,事故の再発防止という使命を担った。また火薬類,高圧ガス,石油コンビナート,液化石油ガス,鉱山,電気,都市ガス,熱供給などの保安行政も行なった。2001年の中央省庁再編により,それまで科学技術庁と資源エネルギー庁でそれぞれ実施していたエネルギー利用に関する原子力安全行政を一元化し,さらに通商産業省で実施していた産業保安行政を移管して新設された。2011年の福島第一原子力発電所事故を機に原子力利用に関する体制が見直され,2012年に廃止。原子力安全行政は環境省に新設された原子力規制委員会に一元化された。

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