原子力に関する研究等を総合的かつ効率的に行い,原子力の研究,開発および利用の促進に寄与することを目的として,原子力基本法および日本原子力研究所法に基づき,1956年6月に設立された特殊法人。核物理学,原子炉化学,燃料・材料等に関する基礎研究や軽水炉等の安全性研究,高温ガス炉(高温工学試験研究炉〈HTTR〉が1998年9月に臨界予定),核融合に関する研究開発(臨界プラズマ試験装置〈JT-60〉が1985年4月に運転開始),放射線利用研究(大型放射光施設〈SPring-8〉が1997年10月に供用開始)まで幅広い研究活動を行っている。また,研究用原子炉を利用して放射性同位体を製造し供給するとともに,各種研修コースを設け原子炉技術者や放射線利用に関する技術者の養成訓練を実施している。さらに,日本原子力研究所は,日本の原子力研究開発の中核的研究開発機関であることから,国際協力にも積極的に取り組んでおり,アメリカのエネルギー省,原子力規制委員会,フランスの原子力庁,ドイツの研究技術省等と各種協定を締結し研究協力を進めているほか,国際機関における共同研究にも参加している。研究所は茨城県の東海村,大洗町,那珂町,群馬県高崎市,大阪府寝屋川市にあり,また青森県むつ市に事業所が,東京都文京区に研修施設がある。2005年10月,核燃料サイクル開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団)と統合し,独立行政法人・日本原子力研究開発機構となった。
執筆者:天野 徹
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1956年(昭和31)原子力基本法にもとづき,原子力開発の研究・実験と平和利用を促進するため創立された公社的研究所。前身は財団法人日本原子力研究所。本部は東京。茨城県東海・那珂・大洗,群馬県高崎,関西の5研究所と原子力船むつをつかさどるむつ事業所がある。57年に第1号炉が運転を開始。おもな事業は安全性の研究,多目的高温ガス炉の開発,放射線利用,原子力船の開発など。2005年(平成17),核燃料サイクル開発機構を統合し,独立行政法人日本原子力研究開発機構となり,本部は茨城県東海村におかれた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…同年4月,日本学術会議が〈公開・民主・自主〉の原子力平和利用三原則(原子力三原則)のもとに原子力の研究・開発・利用を進めるべきことを唱えた声明を決議,翌55年には,この原子力三原則を取り入れた原子力基本法,原子力委員会設置法,原子力局設置に関する法律の原子力三法が成立した。56年1月に政府の原子力委員会,同年3月に民間の日本原子力産業会議(経団連と電気事業連合会が中心となって組織)が発足,さらに5月に科学技術庁,6月には特殊法人として日本原子力研究所が設立され,官民の研究開発体制は急速に整えられた。この一連の動きは,経済復興の過程で,日本の独占資本が先端産業としての原子力産業へ進出を図ったこと,アメリカ重電資本が原子力機器の日本への売込みを図ったことを背景としている。…
…こうして69年,特殊貨物船である原子力船〈むつ〉が進水した。この事業団は85年から日本原子力研究所に併合し,原子力第2船の検討を含めた事業を継続する。イギリス,フランス,ノルウェー,オランダ,イタリア,カナダなどの諸国でも原子力船の研究開発あるいは計画検討などが実施されているが,建造には至っていない。…
※「日本原子力研究所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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