WMAP(読み)ダブリューマップ

デジタル大辞泉 「WMAP」の意味・読み・例文・類語

ダブリュー‐マップ【WMAP】[Wilkinson Microwave Anisotropy Probe]

Wilkinson Microwave Anisotropy Probe》2001年にNASA(米航空宇宙局)が打ち上げた宇宙背景放射探査機。COBE後継として開発され、宇宙背景放射のごくわずかな温度ゆらぎ(異方性)を0.2度という高い角分解能で観測し、全天地図を作成した。その結果、宇宙の年齢は137億年、宇宙全体の物質・エネルギーの割合は、約73パーセントが暗黒エネルギー、23パーセントが暗黒物質水素ヘリウムなどの通常の物質が4パーセントと見積もられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「WMAP」の意味・わかりやすい解説

WMAP
だぶりゅーまっぷ

NASA(アメリカ航空宇宙局)がCOBE(コービー)(宇宙背景放射探査機)に続いて打ち上げた宇宙背景放射をより正確に観測するための科学衛星。WMAPとは、英語名Wilkinson Microwave Anisotropy Probeの略称。ウィルキンソンマイクロ波異方性探査機ともいう。ウィルキンソンDavid Todd Wilkinson(1935―2002)とはこの計画の指導者の名である。2001年6月にアメリカのケープ・カナベラル空軍基地より打ち上げられた。質量は約840キログラムで1.4メートル×1.6メートルの主反射板が二つある観測装置をもち、機体からの赤外線放射を極力抑えるために90K以下に冷却された。軌道は全天をくまなく観測でき、かつ地球太陽の影響をできるだけ排除するようにラグランジュ点(L2)が選ばれた。軌道は地球から約150万キロメートル、地球と同じ周期で太陽を周回した。観測機器はCOBEの差分型マイクロ波測定器(DMR:Differential Microwave Radiometer)と同様である。

 WMAPによる最大角分解能0.2度での観測により、以下のことが判明した。

(1)宇宙の年齢は137億年。(2)インフレーション理論を支持する空間の平坦性。(3)宇宙のエネルギー構成は、物質(バリオン)が4%、ダークマター(暗黒物質)が20%、ダークエネルギーが76%。(4)ハッブル定数は72キロメートル/秒/326万光年。

 これらの測定値は宇宙の生成後、インフレーションで急膨張し、その後ビッグ・バンが起き、水素ヘリウムの元素合成を経て、星・銀河の生成、大規模構造の進化を想定するΛ-CDM(ラムダシーディーエム)モデルでうまく説明できるとされる。なお。WMAPの運用は2010年9月に終了した。

[編集部 2023年2月16日]


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知恵蔵 「WMAP」の解説

WMAP

米航空宇宙局(NASA)が2001年6月に打ち上げた宇宙マイクロ波背景放射探査衛星。地球や太陽の影響をできる限り取り除くため、地球から約150万km離れ、地球と太陽の重力と遠心力がちょうど釣り合うラグランジュ点(Lagrangian point)に置かれた。角度分解能は0.3度、温度測定の精度は10万分の2度で、これまでの衛星や気球の観測に比べ格段によい。03年2月、全天マップを含む最初の観測結果が公表された。それによると、宇宙は平坦で年齢は約137億年。宇宙の構成要素は約74%が暗黒エネルギー、22%が暗黒物質、4%がバリオン物質であり、宇宙が始まって約38万年後に宇宙の晴れ上がりが起こり、約2億年後に最初の星ができたことなどが明らかになった。

(二間瀬敏史 東北大学大学院理学研究科教授 / 2007年)

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