ODA大綱(読み)オーディーエータイコウ

デジタル大辞泉 「ODA大綱」の意味・読み・例文・類語

オーディーエー‐たいこう〔‐タイカウ〕【ODA大綱】

日本の政府開発援助ODA)に関する基本方針を定めた文書。平成4年(1992)に閣議決定され、人道的配慮・相互依存関係・環境の保全・自助努力の四つを基本理念として示した。平成15年(2003)に改定され、「国際社会の平和と発展への貢献を通じて、日本の安全と繁栄確保に寄与すること」を目的として明記。基本方針として、開発途上国の自助努力支援・人間の安全保障・公平性の確保・日本の経験と知見活用・国際社会における協調との連携の5項目、重点課題として、貧困削減・持続的成長・地球規模の問題への取り組み・平和構築の4項目を掲げた。平成27年(2015)、開発協力大綱に改定・改称。政府開発援助大綱

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ODA大綱」の意味・わかりやすい解説

ODA大綱【オーディーエーたいこう】

1992年6月,日本政府が決定した〈政府開発援助〉(ODA)に関する基本方針。日本のODAは米国とともに世界有数の規模となり,援助大国といわれているが,一方であまりにも経済偏重で〈理念なき援助〉といわれてきた。こうした批判にこたえたのがこのODA大綱である。ここではODAの基本理念として,人道的考慮,国際社会の相互依存性の認識,環境保全,自助努力の支援をまず挙げている。大綱の4原則としては,(1)環境と開発の両立,(2)軍事的用途への不使用,(3)被援助国の軍事支出と武器輸出入の動向に注意,(4)途上国の民主化,基本的人権の促進,市場指向型経済の導入への注意,などを掲げる。援助の対象としてはアジア重視,ことにLDC後発発展途上国)重視を打ち出した。〔新ODA大綱〕その後1990年代後半からグローバリゼーション深化のなかで浮上した課題に対応し,援助をめぐる政・官・業のなれあい的体制への批判をふまえて,2003年に新大綱が定められた。ここでは国益重視も明記し,(1)自助努力,(2)人間の安全保障の重視,(3)公平性,(4)日本の経験と知見の活用,(5)国際社会における協調を基本方針とし,重点的課題に貧困削減,持続可能な経済成長,地球的規模の問題への取組み,平和構築の4点を揚げた。アジア重視の方針は維持され,前記大綱の4原則は継承されている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

知恵蔵 「ODA大綱」の解説

ODA大綱

政府開発援助大綱」のページをご覧ください。


ODA大綱

日本の援助政策の基本原則となっている大綱で、1992年6月に閣議決定された。大綱は、(1)開発と環境の両立、(2)平和的用途、(3)受け入れ国のミサイル開発・製造などの軍事面に対する注意、(4)途上国の民主化の促進、を定めた。さらに99年8月には「中期政策」を定め、「外交政策や国益に関わる重要な政策との連携」を図るとして、援助の戦略性を強調、また量から質への転換としてインフラ整備ばかりでなく、社会資本や民生面の向上なども重視する姿勢を打ち出した。10年を経て大綱の見直しの要求が強くなり、03年8月、閣議でODA大綱改定案が決定された。ここでは、(1)相手国からの要請に基づいて援助内容を決めてきた「要請主義」が見直され、(2)国益重視の観点が強調され、援助の理念としての日本の安全と繁栄や国民の利益の増進、などが明記された。またODAの予算規模は2000年度を境に漸減傾向にあり、06年度で7597億円となっている。

(高橋進 東京大学大学院法学政治学研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内のODA大綱の言及

【ODA】より

…しかし80年代には調達先を限定しない〈アンタイド〉化が進展した。1992年6月には〈ODA大綱〉が閣議決定された。ここで日本のODAの基本理念として,(1)人道的考慮,(2)相互依存性の認識,(3)環境の保全,(4)自助努力への支援の4点が,またODA実施にあたっての〈原則〉として,(1)環境と開発の両立,(2)軍事目的への使用の回避,(3)途上国の軍事支出,大量破壊兵器やミサイルの開発・製造,武器の輸出入等などへの十分な留意,(4)民主化の促進,市場指向型経済導入の努力,基本的人権や自由の保障への十分な留意,の4点が,それぞれ盛り込まれている。…

※「ODA大綱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android