個々の人間に注目し、その尊厳を守ることで、持続可能な社会づくりを目指す考え。貧困や環境破壊など多くの問題が国際化する中、国家安全保障への対応だけでは不十分になったとの認識が背景にある。国連開発計画が1994年に最初に提唱、2001年には故緒方貞子さんらを共同議長に国連の「人間の安全保障委員会」もつくられた。
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紛争、災害、貧困など生命・生活・尊厳に対する脅威から人間ひとりひとりを守り、食糧・水・医療・教育を充実させることで個人の能力を向上させ、恐怖と欠乏の脅威を絶とうという考え方。グローバル化が進み、国家中心の安全保障という従来の枠組みではテロリズム、紛争、武器・薬物の密輸、小型武器の拡散、サイバー犯罪、飢餓、大規模災害、環境破壊、地球温暖化、感染症の拡大、難民増大、国際的経済・金融危機、格差拡大など21世紀型危機への対処に限界が生じたため、国連により新たに提唱された。この外交概念は、安全保障の概念を国家レベルから個人や地域社会へ広げ、単に身体の安全だけでなく、心の安寧をも含んだ尊厳ある暮らしを保障できるようにする目的がある。人々の「保護protection」と「能力向上empowerment」に重点を置く。
「人間の安全保障」ということばは、国連開発計画(UNDP)の1994年版人間開発報告に初めて登場した。2001年には国連に「人間の安全保障委員会」が設置され、国連難民高等弁務官などを務めた緒方貞子(おがたさだこ)とインドの経済学者でノーベル賞受賞者のアマルティア・センが共同議長を務め、2003年に初の報告書をまとめた。2012年には国連総会が「人間の安全保障」を重視する決議を全会一致で採択したが、その後も危機は続いており、2022年の報告書では「21世紀末までの気温上昇により世界で4000万人が死亡するおそれがある」と警鐘を鳴らした。また、1999年(平成11)に日本主導で国連に「人間の安全保障基金」を設立し、2019年(令和1)末までに計257件に対して総額4億3505万ドルを同基金に拠出した。紛争地域や地雷残存地域での街づくりの支援、人身売買被害者の支援、児童結婚の撲滅、薬物乱用地域での治療・リハビリ対策、感染症蔓延(まんえん)により労働人口が減少した地域での職業訓練など、幅広い支援計画が実施されている。
[編集部 2022年10月20日]
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(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2008年)
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