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人間の安全保障 にんげんのあんぜんほしょうhuman security

知恵蔵の解説

人間の安全保障

自由と可能性を実現するために、個々の人間を、恐怖と欠乏の2つの脅威から守る、とする観念。1990年代から国連などで使用。安全保障論として、(1)守る対象は個人に焦点を当て、(2)守り手は国家に加え、国際組織、NGO、市民社会などを広く想定し、(3)教育の強化を求める、などが特徴。◇人間の安全保障委員会『安全保障の今日的課題』(2003年、朝日新聞社)

(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2008年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について | 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

人間の安全保障

グローバル化が進む中、紛争や災害、飢餓などの脅威が多様化し、従来の国家の安全保障の方法では対応できなくなってきたことから生まれた概念。人間一人一人に焦点を合わせて、個人の保護や能力強化などを通じて脅威に対処する。日本が主導して創設された国連人間の安全保障基金は、人身売買被害者の支援や紛争で荒廃した都市コミュニティーの再建、児童結婚の撲滅と保護など多岐にわたるプロジェクトに資金を拠出している。基金を運営する組織はこれまで、国連人道問題調整事務所(OCHA)内に設置されていた。だが、人道問題以外の様々な問題に対処するため、今年4月に国連事務総長室に直結する組織に変更することが決まるなど国連内でより明確な位置づけになっている。

(2014-09-17 朝日新聞 朝刊 オピニオン1)

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デジタル大辞泉の解説

にんげん‐の‐あんぜんほしょう〔‐アンゼンホシヤウ〕【人間の安全保障】

国家全体ではなく個々の人間に着目し、紛争・テロなどの恐怖や貧困などの欠乏か人々を解放し、自立するための能力を強化することによって、個人の生存・生活・尊厳を確保すること。→非伝統的安全保障

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

人間の安全保障
にんげんのあんぜんほしょう
human security

国家および国際社会安全保障の実現にあたり,人間と,人間の複雑な社会的・経済的相互作用を最も重視する取り組み,また概念。国家の安全に焦点をあてる従来の安全保障論とは異なり,個人に目を向け,軍事的脅威のみならず貧困病気などの脅威から人々を守ることに目標をおく。1990年代初頭から政策討議や学術論争の場でよく取り上げられ,今日政策関連の分野で国際的に広く用いられるが,定義をめぐっては異論も多い。複数の国家や超国家機関が連携してこの取り組みを支え,今日までに対人地雷禁止条約(オタワ条約)や国際刑事裁判所の設立,児童の権利に関する条約選択議定書など,多くの実績を上げてきた。
軍事面だけに着目した安全保障の取り組みを初めて包括的に批判し,安全保障と個人の福祉の関係に注目すべきと強く訴えたのは,1982年に堤出されたパルメ委員会(軍縮と安全保障問題に関する独立委員会)の報告書であった(→共通の安全保障)。1994年パキスタンの経済学者マブーブル・ハクが国連開発計画 UNDPの『人間開発報告』で人間の安全保障を打ち出し,この概念を初めて明確に定義づけた。冷戦終結による脅威の変化や,発展のための新たな課題が生じていたことがその背景にあった。UNDPは,人間の安全保障を領土や軍事の領域をこえるもので人の生と尊厳に深くかかわるものと主張し,この概念の四つの主要な特徴として,普遍性,構成要素の相互依存性,予防の有効性,人間中心をあげている。UNDPの意味する人間の安全保障とは,飢餓,病気,抑圧などの長期的脅威から人々を守ること,また日常の生活が突如断絶する危険から保護することである。UNDPは,人間の福祉を脅かす潜在的脅威の対象を,共同体,経済,環境,食糧,健康,個人,政治という七つのカテゴリーに分類している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人間の安全保障
にんげんのあんぜんほしょう
human security

紛争、災害、貧困など人間の生命・生活・尊厳に対する脅威から人を守り、食糧・水・医療・教育の充実を図ることで個人の能力を向上させて恐怖と欠乏の脅威を絶とうという考え。グローバル化が進み、国家中心の安全保障という従来の枠組みではテロリズム、紛争、武器・薬物の密輸、小型武器の拡散、飢餓、大規模災害、環境破壊、地球温暖化、感染症の拡大、難民増大、国際的経済・金融危機など21世紀型危機への対処に限界が生じてきたため、新たに提唱された。この外交概念は安全保障の概念を国家レベルから個人や地域社会へ広げ、単に身体の安全だけでなく、心の安寧をも含んだ尊厳ある暮らしを保障できるようにする目的で、人々の「保護」(protection)と「能力向上」(empowerment)に重点を置く。「人間の安全保障」という概念は国連開発計画(UNDP)の「人間開発報告書1994」に初めて登場した。2001年には世界の有識者12人を集めた「人間の安全保障委員会」が設置され、国連難民高等弁務官などを歴任した緒方貞子(おがたさだこ)とインドの経済学者でノーベル賞受賞者のアマルティア・センが共同議長を務め、2003年に国連事務総長に最終報告書を提出した。2012年には国連総会で「人間の安全保障」を重視する決議が全会一致で採択された。
 また、1999年(平成11)には日本主導で国連に「人間の安全保障基金」が設立され、2011年9月までに計210件に対し総額3億5843万ドルの援助を実施している。紛争地域や地雷残存地域での街づくりの支援、人身売買被害者の支援、児童結婚の撲滅、薬物乱用地域での治療・リハビリ対策、感染症蔓延(まんえん)により労働人口が減少した地域での職業訓練など幅広い支援計画に資金を拠出している。[編集部]

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