土地や家屋などを対象とする地方税。1月1日時点の所有者に納税義務が発生する。総務省が示す評価基準に従い、自治体が「評価額」を算出。通常は3年に1度の土地の評価額の見直しに伴い税額が改まる。固定資産はどの自治体にも広く存在するため、税収の偏りが比較的小さいとされ、市町村の基幹税として重要な財源となっている。
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土地、家屋および償却資産に対し、原則として市町村が課する普通税(特別区の区域内では、東京都が課する)。資産の価値に着目して課する一種の名目的財産税。その税収は市町村民税と並んで大きい。普遍性、安定性、応益性などの点で市町村税としてもっとも適した税目とされている。
土地に対する課税は、古くから国税の地租として行われており、地方団体はこれに地租付加税を課してきたが、1940年(昭和15)に還付税として全額が徴収地の都道府県に還付されることとなった。さらに47年には都道府県の独立税とされた。家屋に対する課税は、家屋税が都道府県の戸数割にかわるべき選択税として設けられていたのが、40年に国税とされ、その全額が徴収地の都道府県に還付されることとなった。これも47年に都道府県の独立税となった。また、償却資産に対する課税も、個別的には古くから実施されてきた。50年のシャウプ勧告に基づく地方税制の改正により、これらの土地、家屋および償却資産に対する課税が、新しく市町村税として設けられた固定資産税に統合された。
課税団体は原則として市町村であるが、大規模償却資産については、市町村はその価額のうち一定の限度額まで課税するものとされ、それを超える部分については、その市町村を包括する都道府県が課税権を有する。納税義務者は固定資産の所有者であるが、固定資産の所有者の性格や固定資産の性格・用途に着目して広範な非課税措置が講じられている。課税標準は適正な時価とされているが、土地および家屋については、3年に一度の基準年度ごとに評価替えを行って、地目の変換、家屋の増改築などがない限り、3年間基準年度の評価額に据え置く方式がとられている。1964年度に評価制度が改正され、評価額が時価とかけ離れ、市町村間で不均衡が目だってきたのを改めるため、全市町村を通じて評価の方法が統一された。しかし、これにより、とくに土地については負担が急増することとなったため、別途、負担調整措置がとられることとなった。また、一定の住宅用地や一定の償却資産については、課税標準の特例措置が講じられている。
税率は、標準税率が1.4%、制限税率が2.1%で、1.7%を超えて課税するときは、当該市町村の議会において、納税義務者の意見を聴くものとされている。免税点は、土地が30万円、家屋が20万円、償却資産が150万円である。税制面から住宅建設の促進を図るため、一定の要件を備えた新築住宅については、新築当初の固定資産税が減額される。
[大川 武]
地方税法に基づき,土地・家屋・償却資産を課税物件とし,その所有者に対して課せられる地方税(市町村税)の一種で,法定普通税。ここでいう償却資産は土地・家屋以外の事業用有形減価償却資産をさすが,自動車は除かれる。物税であり,収益を上げない財産に対しても課せられる一種の名目的財産税である。資産が所在する市町村で課税されるが,大規模償却資産については,都道府県と市町村が分け合う。
多くの国において,地方税には財産税が含まれている。イギリスでは,地方税はレートと呼ばれる不動産課税だけである。アメリカでも,固定資産税が市町村税の中心になっている。このように,地方税で財産税とくに不動産税に対する課税が重視される理由は,(1)課税対象を明確に把握することが容易であり,所得課税ほどの高度な徴税技術を必要としない,(2)個々の団体(市町村など)ごとに税率が違っていても,課税対象が低税率の地域へ移動する可能性が少ない,(3)その被課税者は通常,当該地域の公共サービスの受益者たる居住者であるから,応益課税が実現できる,という点にある。
日本でも,土地・家屋とくに土地に対する課税はきわめて古くから存在した。農業が生産の中心であった時代には,土地は最も有力な生産源であったからである。明治維新後は地租が国税の中枢となったが,地方公共団体もこれに大きな付加税を課していた。家屋に対する課税も1882年以来地方税として重要な財源となっており,当時の地租家屋税の課税標準は賃貸価格であった。第2次大戦後シャウプ勧告を契機として行われた1950年の地方税制度の根本的改革にともなって,旧来の地租および家屋税は廃止された。それらにかわって,土地・家屋のほかに償却資産をも併せて課税客体とし,土地・家屋および償却資産の時価を課税標準として課税する固定資産税が創設された。固定資産税の課税標準は適正な時価を用いることになっているが,この時価の決定を固定資産の評価という。
評価は自治大臣が決めた固定資産評価基準に従って市町村が行う。各資産について決定された評価額は,固定資産税の課税標準として所定の帳簿に登録される。この帳簿を固定資産課税台帳といい,関係者の縦覧に供される。土地と家屋は評価額がいったん登録されると3年間は据え置かれるが,償却資産は年々減価を基礎にして評価が行われる。税率は,標準税率1.4%,制限税率は2.1%である。なお,土地価格の上昇が著しく,時価による課税を行えば負担の急増が生じるので,現在では年々の税額の上昇をなだらかにするための負担調整措置が講じられている。ちなみに,土地・建物を課税物件として課せられる市町村税には,別に都市計画税がある。
執筆者:宇田川 璋仁
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(浦野広明 立正大学教授・税理士 / 2007年)
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…40年地方還付税(国が徴収して道府県に還付する税)となり,戦後47年には府県独立税となった。インフレーションで毎年税率を引き上げたが,50年シャウプ改革で,地租とともに固定資産税に吸収された。【坂本 忠次】。…
…また土地租税には,土地の売買によって実現するキャピタル・ゲイン(資産の値上がり利益)の一部を公共に還元させることによって所得の再分配を進める機能もある。租税は一般的に所得税,流通税,財産税に分類されるが,日本の現行の土地租税には譲渡所得税(所得税),不動産取得税・登録免許税(流通税),固定資産税・都市計画税・特別土地保有税・相続税・譲与税および新設の地価税(1992年施行)(財産税)などがある。これらのうち財産税は,土地を所有することに対して,その土地の市場価格に一定率を乗じた額を課税するものであり,土地所有者はこの税がかけられると税負担に耐えるために土地を手放すか,あるいはみずから土地の有効な利用を進めなければならなくなるから,いずれにしても土地市場における供給促進の効果が期待できる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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