短期の資金を集めて,短期の貸出しにもっぱらそれを利用することを原則としている金融機関をいい,預金銀行deposit bankともいう。世界で最も早く18世紀ごろから急速に銀行が発達したイギリスでは銀行分業主義がとられ,短期資金を専門的に取り扱う金融機関と,長期もしくは中期の資金を取り扱う金融機関の間に明確な区別が存在していた。商業銀行は短期資金をもっぱら扱う銀行で,商業銀行がこの原則を維持することを商業銀行主義という。日本で商業銀行にあたるのは普通銀行である。日本は農工業の特殊銀行を設立し,1890年代後半から1900年代半ばにかけて銀行分業主義による銀行制度を確立したわけであるが,普通銀行はイギリス型の商業銀行を理念とした。海外貿易と都市の勃興によってまず商業資本が蓄積され,これが産業資本に転化するという進展を示したイギリスでは,銀行はまず商業銀行として開花したが,日本のような後進国が急速に近代産業の育成をはかると,銀行は商業銀行として発展する余裕がないうちに,早くも1890年代後半から1910年代初めには産業金融に進出せざるをえなかった。日本だけでなく,ドイツ,アメリカなど,イギリスよりも比較的遅れて資本主義の発達した国では,銀行は短期資金と長期資金をあわせ取り扱ったが,これを兼営銀行主義という。しかし,経済の発展によって銀行業務は多様化し,古典的・定型的な概念は現在では崩壊している。
→銀行 →普通銀行・特殊銀行
執筆者:後藤 新一
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短期の預金を集め、その資金を手形割引など短期に運用する銀行。イギリスで18世紀以降発達をみた金融機関で、長期金融や証券業務を兼営するユニバーサル・バンクとしばしば対比される。商業銀行は、典型的には、預金のなかでも要求払預金(通貨性預金)の取扱いを中心とするところから、預金通貨の供給機関であるともいえる。イギリスの商業銀行は要求払預金ないしは決済性預金のほか預金勘定deposit account業務をも行っているが、これは7日間据え置き、以後前日の解約予告で払い戻すことができる。預金がこのように流動性の高いものであることから、その運用についても手形割引のような流動資産を中心に据えることが望ましいとされる。手形割引は、商業手形を銀行券や預金通貨に手数料をとって変えるものであることから、手形の期日が到来すれば自動的に銀行に資金が還流してくる健全な資金運用方法であり、自己流動性をもっているといえる。したがって銀行が流動性の高い預金を集めて、これを自己流動性に基づいて運用することは銀行の健全性を示すこととなり、このような考え方を商業銀行主義とよんでいる。なお、日本の普通銀行は、預金銀行ではあるが、定期預金の比率が高く、長期金融も行う兼営の形をとっており、厳密な意味での商業銀行とはいえない。
[原 司郎]
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