翻訳|pavement
人や車両の通行に便利なように道路の表面を強化したものをいう。広い意味では砂利道や,防塵処理を施した路面,コンクリート,石,煉瓦などのブロックを並べたものを含めるが,一般には基礎となる路盤および2~3cm以上の厚さの表層をもつアスファルト舗装,または路盤とその上の大きなコンクリート版からなるセメントコンクリート舗装を指す。
古代バビロニア,古代ギリシアなどの諸都市では石畳による舗装がなされていたが,大規模な舗装は古代ローマに始まる。馬車交通が盛んだったローマの道(ローマ道)では,馬車の通行を容易にし,道路の耐久性を高めるために,大きな石の板または砂利などを幾層にも敷き重ねて路面を強化した。これらの舗装道路の延長は実に約8万kmにも及んだ。一方,中国でも秦の始皇帝の時代に,路面に石を敷き並べてハンマーで打ち込んで強い路面を作ったと伝えられる。ローマ時代以降18世紀中ごろまでは,技術の進展はまったくみられず,舗装の本格的な普及は産業革命以降のことであった。1764年フランスのトレサゲP.Tresaguet,1805年イギリスのT.テルフォード,15年J.L.マッカダムによって,相次いで馬車交通にふさわしい優れた砕石道工法が開発された。なかでもマカダム工法は耐久性にすぐれかつ安価であり,近代舗装の源流となった。この方法は直径約4cmの砕いた石を路面に敷き並べてローラーで締め固め,さらにその隙間に小さな砕石を入れ,砕石相互のかみ合せによって鉄輪に抵抗するもので,ゴムタイヤの自動車が出現するまでの約100年にわたり世界に広く普及した。19世紀の終りに自動車が出現するに及んで砕石道はしだいに姿を消していき,20世紀初頭にかけ,自動車交通にふさわしいタール,アスファルト,セメントコンクリートによる舗装が相次いで開発された。欧米諸都市で煉瓦,木材を煉瓦状に成形したもの,四角に切った石塊などのいわゆるブロック舗装が盛んに用いられたのもこの時代のことであった。自動車の普及に従ってしだいに強い路面が必要となり,アスファルトやセメントを用いた舗装技術は急速な発展を遂げ,1960年ころに現在の舗装工法が確立された。
一方,日本では,明治以前には馬車は使われておらず,オランダ人の指導による平戸,長崎の石畳を除いては他にみるべきものはなかった。明治時代になって馬車が輸入され,さらに乗合馬車の出現に伴って1886年ころからマカダム工法が各所で使われるようになった。1923年関東大震災復興事業として大規模なアスファルト舗装が建設され,30年ころからはセメントコンクリート舗装も作られるようになったが,自動車交通の発達の遅れた日本で,本格的な舗装が始まったのは第2次世界大戦終了以降のことであった。
舗装は荷重に抵抗するメカニズムの違いによって,剛性舗装と,たわみ性舗装に分類される。現在広く使われているのは前者に属するセメントコンクリート舗装と,後者に属するアスファルト舗装の二つであり,両者ともよく重交通に耐えることができる。セメントコンクリート舗装(単にコンクリート舗装ということが多い)とは,コンクリート版を表層とするもので,表層はセメント,砂,砕石または砂利からなるコンクリートで作られ,車両を円滑に走行させるとともに,荷重を支持する機能をもち,砂利,砕石で作られた路盤は版を支持して版から伝えられる荷重を分散して路床に伝える。版の膨張,収縮による破壊を防ぐため適当な間隔で目地を設ける。セメントコンクリート舗装の一種として,ピアノ線,鉄筋などで補強したプレストレストコンクリート舗装,連続鉄筋コンクリート舗装がある。前者はプレストレスの導入,後者は長い延長にわたって連続的に入れた鉄筋によって薄い舗装で大きな荷重に抵抗させるとともに,目地を少なくして乗りごこちを改善することができる。アスファルト舗装はアスファルト混合物を表層とする舗装をいい,表層,基層,路盤によって構成される。表層,基層,場合によっては上層路盤までが,アスファルト,石粉,砂,砕石を加熱混合したアスファルト混合物で作られ,車両荷重は上の層から下の層へと順次分散され路床へ伝えられる。アスファルト舗装では温度変化による応力が内部で吸収されるので目地は設けない。
アスファルト舗装,コンクリート舗装のどちらの型式でもその厚みは荷重の大きさ,交通量,路床の強さ,気象条件などに基づいて設計される。重交通の場合,コンクリート舗装では30cm厚程度のコンクリート版が用いられ,またアスファルト舗装ではアスファルト混合物で作られる層の厚みが30cmを超えることも少なくない。舗装では強さ以外に,平たん性,滑りに対する抵抗性もだいじな要素である。
執筆者:菅原 照雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
道路面を保護強化するために処理された路面構造物。路面は未処理のままでは水分を大量に吸収してぬかるみとなり、乾燥しすぎればほこりがたって交通上大きな障害になる。このため路面を強化し、平坦(へいたん)性を高めて防塵(ぼうじん)効果をあげ、交通の便を図ることは昔からの人々の願いであったといえる。
近代舗装は19世紀イギリスの生んだテルフォードT. TelfordとマカダムJ. L. McAdamとによってもたらされた。この2人は別個の形式の合理的な砕石道を考案した。また19世紀にはセメントが発明され、これを使ったコンクリート道路や、採掘したロックアスファルトを用いたアスファルト道路も考案されたが、これらの舗装が大きな発展をみたのは、20世紀になって自動車が実用化されてからである。
舗装は数層からなる層構造をもち、各層はそれぞれの役目を分担する。層構造は大別すると表層と路盤とになり、表層は荷重を受けて平滑な面を維持し、摩耗に耐えるものでなければならない。また滑りに対してかなり抵抗のできる摩擦をもち、かつ防水性で、凍結融解の破壊作用にも大きな抵抗のあることが必要である。路盤は、表層に作用する荷重を分散させて安全に路床に伝えるのがおもな役割である。
舗装は、その供用する交通の質と量に対応するよう種々の構造をもつ多種多様の形式のものが実用に供されているが、これを大別すると、セメントコンクリート舗装、アスファルト舗装、簡易舗装に分類することができる。
道路舗装の厚さは、アスファルトやコンクリートなどの表層部とその下の路盤の合計厚であるが、それはおもに交通量と路床の支持力とによって決定される。交通量が多く、路床支持力がとくに弱い場合には90センチメートル程度の厚さになる。東名高速道路では舗装厚は約50センチメートルのアスファルト舗装で、そのうちアスファルト表層・基層部の厚さはそれぞれ15センチメートル程度である。
日本の道路舗装率は、都道府県道以上の道路ではかなり高くなってきている。しかし、欧米に比べるとまだいくらかの隔たりがあり、とくに市町村道の舗装率が低い。また、高速道路や各地のバイパス道路や街路など新設される道路の舗装や既設の道路舗装の維持、修繕も、今後引き続いて実施されなければならない。
[吉川和広]
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…道は地方経済中心地への輸送を主とするものとなる。さらに車による道の破壊は,礫舗装を生む。それとともに従来徒渉場であった川にも橋梁が設けられ,馬車の通行に耐えるものへと変わっていく。…
※「舗装」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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