クズ(その他表記)kudzu
kudzu-vine
Pueraria lobata(Willd.)Ohwi (=P.thunbergiana(Sieb.et Zucc.)Benth.)

改訂新版 世界大百科事典 「クズ」の意味・わかりやすい解説

クズ (葛)
kudzu
kudzu-vine
Pueraria lobata(Willd.)Ohwi (=P.thunbergiana(Sieb.et Zucc.)Benth.)

地下にいも状に肥大した塊根を有するマメ科のつる性多年草。秋の七草の一つにされる。塊根は長さ1m以上,直径20cmにも達する。植物体に黄褐色の開出する粗毛を生じていて,つるは他物にまきついてよじ登り,長さ10m以上となる。茎が地上をはったときには,各節から根を出し,繁殖する。葉は3小葉,大型で,小葉は長さ10~20cmになる。葉腋ようえき)から総状花序を出し,多数の芳香のある紫紅色の花をつける。花期は夏~初秋果実は扁平な豆果で,開出する粗毛におおわれ,長さ約10cm。暖温帯の日本,朝鮮,中国,台湾に分布する。世界の温暖な地域に広く導入され,野生化しており,特に1930年代に北アメリカ南部に土壌侵食防止のために入れられたものは,重大な雑草になったので有名である(北アメリカやヨーロッパへの最初の導入は19世紀末)。時には30kgをこえるという塊根には,約20%のデンプンを含み,調理して食用にされることもあるが,日本では葛粉(くずこ)として有名なデンプン資源植物であった。冬季に採取した塊根をたたきつぶして水にさらし,デンプンを得る。何度も水にさらすと白色良質のデンプンとなり,料理や菓子の材料として重用されてきた。長く延びた茎は,煮沸してから土中に埋め発酵させ,それを水中でもみ洗って,内皮の繊維を採取し,葛布を織った。根はまた,漢方で重要な葛根(かつこん)とされ,デンプン,イソフラボノイド,ダイゼインdaizeinなどを含み,血行をよくし,血糖を降下させ,解熱作用もある。葉は水溶性炭水化物やタンパク質に富み,すぐれた飼料とされる。

 クズ属Puerariaは,10種あまりが東アジアから太平洋諸島に分布しており,インドからマレーシア地域に分布するP.phaseoloides Benth.(英名tropical kudzu)やP.tuberosa DC.(英名Indian kudzu)も,飼料,土地被覆,食用(塊根)などに利用されている。ニューギニアやポリネシアでは,クズの根が食用とされているという報告があるが,これが日本のクズと同一種かどうかについては再検討を必要とする。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クズ」の意味・わかりやすい解説

クズ
くず / 葛
[学] Pueraria lobata (Willd.) Ohwi

マメ科(APG分類:マメ科)の藤本(とうほん)。茎はつる状で、褐色の粗い毛があり、長さ10メートルにも達して基部は木化し、根は長大で多量のデンプンを蓄える。葉は3小葉からなり大きく、長柄がある。小葉は両面、とくに裏面に白毛をやや密につけ、頂小葉は菱(ひし)状円形、長さ・幅ともに10~20センチメートルで、3中裂するものもある。8~9月、葉腋(ようえき)の総状花序に長さ約2センチメートルの紅紫色の蝶形花(ちょうけいか)を密につける。旗弁(きべん)は基部付近から外側にほぼ直角に折れて立ち、内面中央付近に1対の黄色斑(はん)が目だつ。萼片(がくへん)は長く、萼筒のほぼ2倍。豆果は線形で扁平(へんぺい)、褐色の長剛毛が密生する。北海道から奄美(あまみ)群島の山野に生え、朝鮮半島、中国、東南アジア、太平洋諸島にも分布。根のデンプンは葛粉(くずこ)になり、茎の繊維で葛布(くずふ)を織る。昔、大和(やまと)(奈良県)の国栖(くず)の人がデンプンを売りに出したので、この植物をクズとよぶようになったという説がある。秋の七草の一つ。

[立石庸一 2019年10月18日]

薬用

漢方では、根を板状または小さな四角形に刻み、冷水中にさらしたあとに乾燥したものを葛根(かっこん)(形により板(いた)葛根、角(かく)葛根という)と称し、発汗、解熱、鎮痙(ちんけい)剤として用いる。有名な処方は葛根湯で、感冒、インフルエンザ、はしか、肺炎、神経痛、蓄膿(ちくのう)症、中耳炎、肩こりなどに頻用する。花を葛花(かっか)といい二日酔いの治療に用いる。クズデンプン、葛根にもその作用がある。

[長沢元夫 2019年10月18日]


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百科事典マイペディア 「クズ」の意味・わかりやすい解説

クズ(葛)【クズ】

北海道〜九州,東アジアの山野に自生するマメ科のつる性多年草。肥大する根があり,茎の基部は木質化する。葉は3出葉で,小葉は菱状卵形,長さ幅とも10〜15cm,下面は白っぽい。夏〜秋,葉腋に花穂を出し,紅紫色の蝶(ちょう)形花を多数密につける。豆果は扁平な狭楕円形で,粗毛があり,長さ約10cm。土留めに植えたり,飼料とする。根はデンプン(葛粉(くずこ))を含み,周皮を取り除いたものを葛根(かっこん)と称し,葛根湯の主原料となる。また茎の繊維で襖(ふすま)等に用いる葛布を織った。世界各地で砂防用などとして栽培され,北米では野生している。
→関連項目デンプン(澱粉)料作物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クズ」の意味・わかりやすい解説

クズ(葛)
クズ
Pueraria lobata; kudzuvine

マメ科のつる性多年草。アジアの暖・温帯に分布する。山野に普通で,大群落をつくる。全草に粗毛を生じ,葉は3枚の小葉から成る複葉。花は紫紅色で7~9月頃に多数が総状花序をなして咲く。根は長く肥大し,上質のデンプンをたくわえている。くず粉は本来これを取出したものであるが,今日ではジャガイモデンプンで代用されている。葉はウシやウマの飼料とされ,茎の皮は布を織るのに利用された。日本では秋の七草の1つとして昔から親しまれてきたが,現在では北アメリカにも帰化植物として分布し,手ごわい雑草となっている。

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栄養・生化学辞典 「クズ」の解説

クズ

 [Pueraria lobata].マメ目マメ科クズ属の多年草.根からデンプンをとる.花や若い葉も食用にする.英語のarrowrootはクズに相当しデンプンをとるが,別の植物.⇒アロールート

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世界大百科事典(旧版)内のクズの言及

【カズラ(蔓∥葛)】より

…このように,草木のつるや茎や花などを取って髪飾りとすることを〈鬘く〉といい,もともと,植物の盛んな生命力を人間の体に取り入れようと願ったことから始まった。 地方により特定の植物,例えばテイカカズラ(岡山),クズ(香川)などを単に〈かずら〉と呼んでいる。また蔓水,蔓壺というと,それぞれサネカズラ(美男蔓)の粘液とそのつるを浸すに用いる壺のことである。…

※「クズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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