翻訳|combine
元来combined harvester and thresherと呼ばれ,刈取作業と脱穀,選別作業を走りながら同時に行う高能率の収穫機である。穀物(イネ,ムギ)用,豆類用などがある。コンバインには大別して2種類ある。一つは普通コンバインと呼ばれ,アメリカなどで開発されたもので,刈り取った刈りわら(穂つきのわら)ごと脱穀部に入れてしまうため,脱穀,選別部が大型になる。他の一つは自脱コンバインといい,日本で開発されたもので,わらを選別部に入れない形のものである。したがってとくに選別部がコンパクトになり,コンバイン全体としても小型,軽量で消費エネルギーの少ないのが特徴である。外国では普通コンバインと区別し,head feed combineまたはJapanese combineと呼ばれている。コンバインは高い含水量のもみを収穫するので,品質が低下しないよう急速に乾燥させる必要があり,そのため乾燥機による人工乾燥が行われる。
普通コンバインの構造は,刈取部,脱穀部,選別部よりなる。刈取部は幅広い糸巻状のリールで作物をおさえこみながらバリカン式の刈刃(カッターバー)で作物を刈り取り,脱穀部へ送る。円筒に多数の歯を配列したこぎ胴(シリンダー)によって脱穀し,こぎ胴の下に配した多孔板(コンケーブ)からもみが落下し,わらは後方に送られる。しかしもみにはわらくずなどが多く混じっているので,送風機によって吹きわけられる(風選)。一方わらにも多くのもみがささっているので,揺動するふるい(ストローラック)にかけてもみを分離,風選する。普通コンバインには,数十馬力のエンジンと車輪をそなえて自走するものと,トラクターに牽引される形のものがある。大きさは刈幅によって表し,2~8mのサイズがある。
自脱コンバインは,日本式の刈取機と自動脱穀機(自脱)とを結合したもので,刈刃で刈り取った刈りわらの下部をチェーン状の装置ではさんでこぎ胴軸に平行に送りながら,穂先だけをこぎ胴にあてて脱穀する。したがってわらがこぎ胴および選別部を通過しないので,ストローラックなどが不要で,小型で所要動力も少ない。水田の走行に適するようにゴム履帯(クローラー)をつけ自走する。大きさは刈幅または何条刈りかで表す。2条刈り(刈幅0.5m)で8PS(メートル馬力)程度のエンジンをそなえている。
コンバインは19世紀にアメリカで開発された。初めは数十頭の馬に引かせたといわれる。1910年代に入って普通コンバインの原型ができ上がった。自脱コンバインは日本で1960年代に開発され急速に普及した。コンバインの作業能率は普通コンバインで刈幅1m当りイネの場合0.6~0.9ha/h,ムギで1.5~2.5ha/h。自脱コンバインで2条刈りのイネで平均0.6ha/hである。コンバインは収穫の全工程を総合化した複雑な機械であるため操縦,調節に神経をつかう。操縦者の負担を軽減し,作業精度を高めるために,各種の自動制御装置が導入されるようになっている。
→農業機械
執筆者:木谷 収
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
田や畑の上を走行しながら、イネ、ムギ、ダイズ、トウモロコシなどの穀物を収穫し脱穀作業などを行う農業機械。コンバイン・ハーベスターcombine harvesterの略語である。「コンバイン」は組み合わせる、結合するという意味の英語であり、このことばに収穫機械という意味はもともとなかったが、刈取り機と脱穀機を組み合わせた収穫機械をコンバイン・ハーベスターとよび、その略称としてコンバインということばが広く使われるようになった。
コンバインは、ムギなどの穀物の収穫作業を効率的に行うために、19世紀中ころにアメリカで発明された。初期のコンバインは畜力式であったが、20世紀になると内燃機関を搭載した動力式のコンバインとして進化し、今日のコンバインの原型となった。コンバインは、バリカンやディスク状の刃の刈取り部、刈り取った収穫物の搬送部、穂や茎から実を取り出す脱穀部、脱穀した穀粒を一時貯留するグレインタンク、排藁(わら)処理部などから構成されている。
日本では水田という湿地を走行するために装軌式(通称キャタピラー)の走行装置をもち、穂の部分だけを脱穀部に入れる独自の脱穀部をもつ自動脱穀コンバイン(いわゆる自脱コンバイン)が1967年(昭和42)に市販化されている。コンバインはその後も進化を続け、狭小な農地での収穫が可能なものや、傾斜地での収穫が可能なものも普及してきている。また、位置情報をGPS(全地球測位システム)でとらえながら収穫時の穀物の重さや水分などを逐次測定し、収量分布をコンピュータに取り込むことができるような収量コンバインも使われるようになった。さらに今日では、収穫作業を無人でできるようなロボットコンバインも登場してきている。
[谷脇 憲 2017年5月19日]
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…営農作業は整地耕耘(こううん)作業から,収穫調製作業などまで数段階に及ぶため,機械の種類が多い。用途別にみると,整地耕耘用機械(装輪式トラクター,動力耕耘機など),栽培用機械(田植機,野菜苗移植機など),管理用機械(噴霧機,散粉機など),収穫調製用機械(稲麦刈取機,刈払機,コンバイン,脱穀機,籾すり機,乾燥機など),飼料用機械(飼料さい断機など),穀物処理機械(精米麦機,製粉機械,製めん機など),製茶用機械などがある。日本の1997年の農業機械の生産額は6024億円で,そのうち装輪式トラクター(2194億円),動力耕耘機(318億円),田植機(532億円),コンバイン(1526億円)などの占める割合が高い(通産省〈生産動態統計〉による)。…
…やがてエンジンの回転動力により,播種機や刈取機(車輪から回転動力をとる畜力用は,すでに南北戦争のころ完成していた)を動かすようになった。脱穀には,これもすでに発明されていたスレッシャーが刈取機とともにトラクターと一体化され,その名もコンバインド(結合された)・ハーベスター(略してコンバイン)として19世紀から20世紀にかけてのアメリカ農業の動力機械化をさらに推し進め,その影響は半世紀遅れてヨーロッパに,そして世界中に及んだ。【飯沼 二郎】【堀尾 尚志】
【中国】
中国における古代の農業の中心は華北乾地農法で,その作業は大略,耕起→整地(耙,労(耮(ろう)))→播種→整地(耙労,除草,中耕など)→収穫→調整という手順である。…
※「コンバイン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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