改訂新版 世界大百科事典 「ツユクサ」の意味・わかりやすい解説
ツユクサ
Commelina communis L.
路傍や荒地のやや湿った場所にふつうに生えるツユクサ科の一年草。アオバナ,ボウシバナともいう。古くはツキクサと呼んだ。茎は高さ10~50cmで下部は倒伏し,盛んに枝を分かつ。葉は互生し,長さ5~7cm,卵状披針形で鋭尖頭,平行脈が著しい。基部は膜質の鞘(さや)となり茎をつつむ。6~8月に青紫色の花を咲かせる。花は苞葉に包まれた短い花序に数個つくが,1個ずつ咲くので一輪咲きに見える。苞葉は二つに折りたたまれてぴったりとくっつき,無毛または両側に毛がある。花被は6枚あり,内花被3枚のうちの上側2枚が大型でよく目だつ。おしべは6本あるが,葯に花粉があるのは2本だけで,他の4本は変形して仮雄蕊(かゆうずい)となる。果実は楕円形で,最初白色汁質だが,後に乾いて蒴果(さくか)となり裂開する。種子は蒴果1個あたり3~4個で,長さ約3mm,形は不規則で質は硬く,小さな礫(れき)に似ている。日本全土,中国,朝鮮,旧ソ連西部に分布し,北アメリカに野生化している。中国では若芽が食用にされることがある。全草は中国で解熱,解毒,風邪,利尿などに用いられる。また斑入りの園芸品種もある。形態的に変異が多く,花がとくに大輪のものはオオボウシバナvar.hortensis Makinoと呼ばれ,観賞用または染料用として栽培される。青色色素のコンメリニンを含む花の汁で染めた青紙は,友禅,絞染の下絵の絵具に用いられる。
ツユクサ属Commelina(英名dayflower)は約200種を含む大きな属で,熱帯・亜熱帯域にたくさんの種が分化している。日本には4種がある。ホウライツユクサC.auriculata Bl.は苞葉の縁が合着して漏斗状となる種で,九州南部,沖縄から東南アジアにかけて広く分布する。この種は地下に閉鎖果を結ぶ性質がある。
ツユクサ科Commelinaceaeは38属約500種を含み,ほとんどが熱帯,亜熱帯の植物である。ムラサキツユクサ属(トラデスカンティア)には観賞用に栽培される種が多い。ムラサキオモトはメキシコ,中米原産の1属1種の植物で,観葉植物としてよく栽培されるものの一つである。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報