人口変動の状態をいい,人口の大きさの変動と構造の変動が含まれる。したがって人口動態は,大きさを決定する要因である出生と死亡(両者の差が自然増加),流入と流出(両者の差が社会増加),および構造を決定する要因のうち,結婚,離婚,傷害の発生および回復,職業または所属産業の転換等から構成されている。さらに,出生と死亡の中間にあるともいえる胎児死亡および死産も加えられる。これらの人口動態の要因の発生を,人口動態事件あるいは人口動態事象vital eventsといい,これが系統的に数量的に表現されたものを人口動態統計という。しかし,上記の要因のすべてが人口動態統計に表されているわけではない。とくに人口移動はそのデータの収集方法が他の動態事件とはまったく異なっており,また一般に,人口移動についての事実をとらえるための行政上の制度が確定されていないという問題点がある。また,疫病および傷害も特別の衛生統計や医療統計(〈患者調査〉や〈国民健康調査〉など)で扱われることが多い。したがって,たとえば日本の人口動態統計では,出生,死亡(乳児死亡を含む),死産,周産期死亡,婚姻,離婚に限定されている。人口動態統計は,ある期間に発生したものをまとめたものであるが,これに対するものに人口静態統計がある。国勢調査結果の統計表がその代表的なものであるが,ある時点における人口の状態(人口静態),すなわち人口の大きさとか人口の自然的・社会的・経済的構造を示している。それはまた人口動態によって絶えず変化している人口の総合的結果の一つの瞬間映像であり,現実には存在しない一つの〈人工像〉といえよう。人口動態統計と人口静態統計の両者を人口統計という。
→人口調査 →人口統計
執筆者:黒田 俊夫
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